日本ガス協会は2月2日、東京都港区の第一ホテル東京で「2023地域活性化フォーラム」をオンラインとのハイブリッド方式で開催し、計約550人が参加した。「地域のニーズを捉え、自治体と連携し課題解決を仕掛ける」をテーマに、基調講演とガス事業者講演を実施。それぞれウェルビーイングを中心に据えた施策のほか、自治体の要望に沿いつつ企業の発展につながる事例を紹介した。
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基調講演(1)「幸せ人口1000万ウェルビーイング先進地域、富山を目指して」:新田八朗・富山県知事
はじめに、1月1日に石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、富山県内においても観測史上初となる最大震度5強を観測した。石川県の特に能登地方で大変甚大な被害が出ているが、富山県内でも多くの人的被害、家屋の被害に加え、企業の事業活動にも大きな影響が生じている。被害を受けられた多くの方々に心からお見舞いを申しあげる。
富山県は、人口減少や少子高齢化、新型コロナウイルス後の経済回復などの課題解決に向けて、2021年2月に「富山県成長戦略会議」を設置した。県内外の富山ゆかりの実業家など11人が集まり、スタートアップ支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)による新産業戦略、ブランディング戦略などについて議論した。1年間の議論を経た結論が、「ウェルビーイング向上を成長戦略の中心に据える」ということだった。
ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされた状態のことを指す概念。21世紀は一人一人の主観的な幸せの実感、つまり生活や人生において「質」が重視される。県民それぞれがウェルビーイングを向上できれば次世代に価値を生むような人材を育成でき、その過程で県の魅力が高まれば県外からも人が集まってくる。ウェルビーイングと経済成長の好循環を通じて、新しい社会経済システムの構築を目指す。
これを分かりやすく伝えるため「幸せ人口1000万ウェルビーイング先進地域、富山」をビジョンに掲げた。県内人口は現在約100万人。1000万人とは、定住していないけれど富山につながりがある人、いわゆる関係人口を含めた数だ。22年の関係人口の推計値は約351万人であり、1000万人を目指して取り組んでいく。
●六つの柱で推進
22年2月、会議での議論を基に、ウェルビーイング向上を中核にした「富山県成長戦略」を策定した。戦略の柱は、▽ウェルビーイング戦略▽まちづくり戦略▽ブランディング戦略▽新産業戦略▽スタートアップ支援戦略▽県庁オープン化戦略――の六つ。戦略ごとにプロジェクトチームを設置し、23年度は196事業を実施している。
軸となるウェルビーイング戦略は、全県民を対象にするが、特に若い女性に焦点を当てて進めている。というのも富山は若い女性の社会減が課題となっているからだ。そこで男性の家事・育児参加の促進のほか、テレワークの導入推進など多様な働き方が選択でき、女性のウェルビーイング向上につながる環境づくりを進める。
二つ目のまちづくり戦略で重要なのはデジタル強化と官民連携の深化だ。デジタルに関しては「Digi―PoCTOYAMA(デジポックとやま)」という実証実験を実施。地域課題をデジタル技術で解決し、新たな事業創出につなげるため、全国から公募し、採用された案件に対して実証費用を県が負担する。
官民連携に関しては、事業創出の機会を迅速に進めるため、企業からのワンストップ窓口として22年4月に「官民連携・規制緩和推進デスク」を設置した。1日当たり2件ほどの相談が寄せられる。23年度には「官民連携・規制緩和推進本部」も立ち上げ、情報共有や体制強化を図る。
公共サービスの一つである地域交通に関しては、欧州のモビリティ計画も参考に「富山県地域交通戦略」を今年度に策定する予定だ。地域交通サービスを「公共サービス」と位置付け、持続可能な地域交通サービスを目指したい。
●寿司=富山へ
三つ目のブランディング戦略は、富山の魅力を知ってもらうため「寿司と言えば、富山」を広めていく。アンケートによると寿司で連想する都道府県のうち富山と回答した人は全体の約9%。これを10年後には90%にしたい。食から発信して認知度を上げ、関係人口の拡大を図り、富山=ウェルビーイングというイメージを確立することが狙いだ。また、7月に開業予定の商業施設「KITTE大阪」(大阪市)において、北陸3県が連携してアンテナショップを出店予定だ。こうした機会も生かしながら情報発信に努めていく。
四つ目の新産業戦略に関して、富山は製造業が多く、カーボンニュートラル(CN)への貢献に力を入れる。例えば豊富な水を活用した小水力発電開発の検討を進める。また、富山は医薬品産業が盛んで、この産業をさらに強化すべく産学官連携の「くすりのシリコンバレーTOYAMA」創造コンソーシアムで、研究開発や人材育成の強化を図る。
DX推進によるデジタル人材の育成は、シンガポール国立大学との連携や、中高生を対象にしたプログラミングスクールを開催している。さらに富山県立大学では産官学の育成拠点となる「DX教育研究センター」を設置したほか、今年4月にはデータサイエンス人材育成のための新学部「情報工学部」を開設予定だ。
●地域企業への期待
五つ目のスタートアップ支援戦略では、本県経済をけん引するような新たな企業を創出するため、高い成長が見込まれるスタートアップを選定し、これまで9社に対して伴走支援をしてきた。成果指標として、26年度までに上場会社1社、大学発ベンチャー10社以上の設立を目指す。
最後の六つ目は県庁のオープン化戦略だ。政策づくりへの県民参加や行政サービスの向上によってウェルビーイングを上げる。しかし、県庁への要望は多様化、複雑化しており職員だけでは対応できない課題もある。そこで、官民連携、広域連携が重要だと考える。企業にとっても従業員のウェルビーイングが向上すれば、クリエイティブな能力や生産性、営業成績が上がるといわれ、それが地域全体の成長につながる。ぜひ、自治体との良い関係づくりを推進していってほしい。
●基調講演(2)「市民の幸福感を高めるスマートシティの思想」:南雲岳彦・一般社団法人スマートシティ・インスティテュート専務理事
当法人は、スマートシティを推進する産官学連携プラットフォームとして2019年に立ち上がった。
スマートシティとは、人口減少や高齢化の課題に対し、テクノロジーで解決する取り組み。日本は大都市圏以外で人口減少が進む。それに伴い税収も減少すると見込まれ、解決策としてスマートシティの導入が急がれている。
スマートシティという言葉が使われはじめた当初はエネルギーや環境分野の課題に関する取り組みを意味していた。現在は人間中心主義という意味で使用される。一人一人のライフスタイルの変化に合わせてデジタルの恩恵を受けられる社会を構築することで、国民の豊かな暮らしを実現する。
この未来像を実現するために日本政府は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、スマートシティの実装地域を25年までに100地域にする目標に向けて交付金を交付している。デジタル実装タイプは46都道府県、1009市区町村が採択された。
交付金を基に全国各地でスマートシティの実装が進む中、先駆けといわれるのが福島県会津若松市だ。食農業や決済、観光など分野ごとに具体的な取り組みが進んでいる。例えば、食農業分野では、形が悪く出荷できない野菜等を生産者から飲食店に直送する需給マッチングプラットフォームがある。決済分野では、デジタル地域通貨を導入、スマートフォンなどから市役所の手続きができるなど、いわゆるデジタルガバメントが進む。茨城県境町は全国で初めて自動運転バスを導入した。今はフェーズ2の段階だが、いずれはフェーズ4に移行し、運転手がいないバスの運行が実現するだろう。
これらのスマートシティが成功する地域の共通点は五つ。一つは地域空間の境界がはっきりしており、運命共同体意識や市民参加意識があること。二つ目は、自分の生きがいとして街づくりに参画する人がいること。三つ目は行政主導ではなく、各地域の民間企業が率先して行っている。四つ目は、地域の課題ばかりを探さずに地域の魅力、ウェルビーイング因子を見つけ、それを強みにする。五つ目は近接性。産官学民が顔の見える距離で意見交換できる場があるということ。
中でもスマートシティに有効なウェルビーイング因子は、アンケートやデータから分析できる。アンケート調査は生活満足度や感情・思考に関するもので主観的幸福に、所得額や出生率、労働時間などデータで得られるものは客観的幸福としてそれぞれ分けられる。それらを照らし合わせ、その指標が政策と重なり合っていたら適切な政策だということも分かる。
●住民の幸せを政策に
ウェルビーイングは住む環境によっても異なる。日本と米国では違うし、日本の中でも地域によって異なる。地域のウェルビーイングを考えるには、三重の円の構造で考える必要がある。中心に住民自身がいて、その周りに地域社会があり、一番外側に都市機能や自然環境といった生活環境がある。この構造から地域の人間関係や生活環境が住民自身の自分らしさにどう作用しているのかを読み取る。
例えば、住民が都市機能から大きな影響を受けている場合、「移動・交通」「買い物・飲食」などというウェルビーイング因子に対して客観指数(KPI、重要業績評価指標)の目標達成に向けた政策デザインを設計することが可能だ。街を作ってから都市機能について意見を聞くのではなく、住民の幸せを分析し、そこに合致する街づくりを行う。これを「ウェルビーイングバイデザイン」という。
●新事業は満足度高
内閣府の世論調査によると「物の豊かさ」か「心の豊かさ」のどちらが重要かという質問に対し、高度経済成長以降、物の豊かさと答えた人の割合は一定水準にあるが心の豊かさと答えた人は右肩上がりになっている。これは「イースタリンのパラドックス」と呼ばれる現象で、所得が一定程度を超えるとさらに所得が増えても幸福度は上がらず、逆に下がることもある。つまり、経済的に豊かでも精神的な豊かさにはつながらない。
今年度、当法人が実施した全国の幸福度、生活満足度調査では、10代から70代以上の約8万5千人にアンケートを取った。全体的に女性のウェルビーイングが高いという結果が出た。これは地域にネットワークを持っているからだと推測する。幸福度の最も低いのは40代男性、生活満足度で最も低いのは30代男性だった。
また、市区町村の自治体単体でウェルビーイングと相関性が高いものをまとめた。幸福度1位は健康、2位は自己効力感で、3位は公共空間。これは住む街の雰囲気が合っているかどうか。4位の教育機会の豊かさは、子供の場合と大人の学び直しの両面がある。5位には地域とのつながりや多様性・寛容性がある。生活満足度では、1位が公共空間、2位が教育機会の豊かさ、3位は地域行政とある。また、5位には事業創造がランクインしている。やはり、新しい事業が多く生まれる街に住む人は生活に満足している割合が高いことが分かる。
このような自治体別のウェルビーイング因子と幸福度・生活満足度との相関は当法人のホームページから無料で閲覧が可能だ。データを活用して、街固有の魅力となるウェルビーイング因子を見つけ、街づくりに参画してほしい。
●事業者講演(1)「地域とともに―地方自治体との連携―」:中井茂平・上野都市ガス代表取締役社長執行役員
当社は1927年に上野ガスとして、伊賀上野の俳句をたしなむ青年実業家達が立ち上げたユニークな会社だ。近年では「ライフラインの上野ガス」というテーマを掲げ、伊賀市を中心に活動している。本社がある伊賀市(旧上野市)は、大阪と名古屋の中間にあり、忍者と松尾芭蕉などでまちおこしをしている。
都市ガス事業は81年に子会社化し「上野都市ガス」として、LPガスなどを取り扱う上野ガス(顧客数約1万8千件)を親会社に8社のグループ会社を擁する。都市ガス事業(同約1万件)は創業96年、建築業の上野ハウスは創立54年、通信事業の伊賀上野ケーブルテレビ(CATV)が創立33年など、グループ社員は約300人だ。当社の2022年度の連結売上比率を見てもらうと、上野ガスは親会社だが4分の1ほどで、加えて15%以上を占める会社が4社もある。人口9万人程度の伊賀市以外ではほとんど事業は行っておらず、当社が業種業態を変えて展開している。また、グループ間の商取引はほぼなく、各社で努力をして利益を出すよう自主経営を尊重している。新規事業を起こす際は売り上げ10億円、25人の雇用を目指す。
新しい試みでは森林を12・9㌶所有し、社内で発生する二酸化炭素のニュートラル化(オフセット)にも取り組んでいる。また、電力のPPA(電力購入契約)も4件を獲得した。コロナ禍での飲食店応援のためにガス機器購入者にグルメチケットを配る試みも3年間続けている。商工会議所やロータリークラブなど地元団体への人員も多く出し、地元密着度を高めている。入社5年以内の新入社員は「地域貢献室」と業務を兼務している。祭りやボランティア活動にも積極的に参加し、地域密着のDNAを養っている。
地域の少子化対策として、18年に子育て支援料金メニューを展開している。子供が3人なら3%、4人なら4%、5人なら5%とそれぞれ5年間が割り引きの対象期間だ。少子化をなんとか食い止めたい。また、高齢化対策にも力を入れる。市と見守り協定を締結し、社員の多くが認知症サポーター教育を受講。上野ガスは老健サポートを、上野ハウスは訪問看護事業を展開している。
●災害、教育などで連携深化
伊賀市とは災害時に宅配水を配送する協定を締結。コロナ禍には社会福祉協議会と協定を結び罹患者宅に食品を置き配するサポートも行った。
学校・教育支援としては、小学校への環境出前授業は18年間行っている。小学生にタブレット等を配布し、ウェブ環境を整え、学習に活用する文部科学省のギガスクール構想に関して、学校へのネット回線の導入・設定、アフターフォロー等も、すぐに対応できる伊賀上野CATVが請け負った。さらにPFI事業で市内全小学校への給食の配送を行っている。また、斎苑のリニューアル事業も受託、今年7月から運用を開始する。
新しい試みである給食センターのPFI事業は、15年間、43億9千万円で受注した。20年4月から開始している。多業種を有するグループメリットを生かし、上野ハウスは建築、上野ガスはLPガス供給、上野ガス配送センターは給食配送により新たな人員雇用、外部収入源を確保することとなった。この3社が給食調理会社と共にSPC(特別目的会社)に資本参加する。
斎苑のPFI事業は、15年9カ月、26億3千万円で受注した。上野ガスが主となり、上野ハウスと共にSPCに出資。燃料供給の選択肢に都市ガスを含む入札だったため上野ガスと上野都市ガス間の情報を遮断し、提案に挑んだ。提案金額は他社よりも高かったが、災害時対応など危機管理が評価され、採用となった。
●地域になくてはならない会社
当社が取り組む事業には基準がある。それは自治体が募集する広く多くの市民に関係する事業で、さらに市民に長く関係する事業であること。ガス事業はまさにそうだ。
また、三重大学との連携も進めている。都市間競争における伊賀市のまちづくり、学術面の向上のため誘致活動を行い、09年に三重大の研究拠点ができた。産学連携や留学生との交流、大学と顧客企業との共同研究の支援も積極的に行っている。伊賀市でPRする忍者についても大学内に「忍者研究センター」が設立された。
これからも伊賀市との連携を強化して、グループで協力して積極的に半官半民の事業に進出していきたい。100周年も間近なので、新たに農業や林業、陸上型水産業も検討している。
一番大切なことは、お客さまに近づく努力を怠らないこと。地域になくてはならない会社を目指していく。
●事業者講演(2)「街の活性化にむけたハブ創り―“nodoca”とブランディング―」:前田健之輔・筑紫ガス代表取締役専務
複合施設nodocaと会社のブランディングを見据えながら、私たちがハブとなって進めている、地域の活性化について説明する。
当社は1964年に創業し、今年で60周年になる。従業員数は76人で、本社がある福岡県筑紫野市、さらに太宰府市、小郡市、筑前町、佐賀県基山町の3市2町が供給エリアで2県にまたがっている。顧客件数は3万7千件で、うち3万6千件が家庭用だ。ガス販売量の6割を占める工業用・商業用の大口需要家は基山町に集中している。
この地域は福岡市のベッドタウンで、未だに転入者が転出者を上回っており需要増が見込まれる。一方で、これから徐々に高齢化は進展し、生産年齢人口が少なくなっていくことも考える必要がある。
●地域にアクションを!
私たちの姿勢も変わってきた。以前のお客さまから依頼がないと動かない「街(待ち)のガス屋」からコンセプトを転換した。地域を元気にするためのアクションを起こしていく会社を目指す。
まず、情報誌・ガスナビを刷新し、読者の若返りを目指した。展示会・ガスフェスタは地域の皆さんにきてもらえる仕組みを作り「ガスまつり」にチェンジ、今年度は来場者が8千人を超えた。SNSも活用し、フォロワーを増やしている。また、中期経営計画を作り、その中で地域戦略も掲げた。そして、最終的なアクションとして、「nodoca」が誕生した。
当社では、地域を盛り上げるための交流や情報発信の拠点がないことが課題だった。その中で筑紫野市が上下水道庁舎の跡地を活用した公募型プロポーザルを募集した。ここはJR二日市駅徒歩1分の場所で、まちの中心だ。公共公益施設が集約し、交通の拠点であるこの土地で多様な交流や地域のにぎわいを作るにはぴったりの立地だった。同時に、私たちが情報を発信するにも理想的な場所であったため、パートナー企業と共に応募して、提案が採択され、nodocaが完成した。
●nodocaで地域をつなぐ
nodocaのコンセプトは、(1)(大宰府や豊富な温泉、寺社など)歴史・文化を生かす(2)(周辺の)都市・他地域とのつながり(3)(エネルギー会社として)持続可能な暮らしの提案(4)地元(二日市)とのつながり――の4点だ。
建物は中庭を挟んでガス棟と保育棟からなり、いずれも2階建て。2022年にガス棟が完成、ショールームやカフェが稼働し、料理教室もできる。23年からは保育園が開園。地域で活躍する女性を増やし、待機児童を減らしたいという思いがあった。
来館者は、年々増えており、昨年末で開館以来3万人を超えた。来館者の属性は、67%が筑紫野市からの来館で、60%がカフェの利用が目的。35~44歳が45%を占めて、86%が女性だ。
この数字は課題でもある。まず、エリアの偏りを改善するために、来館者が少ない地域の店舗とのイベントを企画し、nodocaの利用者に店の存在を知ってもらうと共に、普段から店を利用している人にも、nodocaを知ってもらう機会を作った。カフェ以外の利用についても、また来たいと思わせるイベントを充実させた。現在は、マルシェや子ども食堂、離乳食教室など、地域の人たちにも自主的に活用してもらい、多様なイベントを開催している。
私たちはnodocaを活用するに当たり、▽まち(市役所、商工会、学校等)▽ひと(子育て世代、子供、高齢者等)▽企業(会社、生産者、飲食店等)――の三つの軸を設けた。これらがnodocaでつながり、ハブになることを目指している。例えば、小郡市とハウスメーカーをマッチングさせ、同市の物産イベントや分譲地のPRをnodocaで開催した。また、小郡市の子どもたち向け人材育成プログラム・小郡寺子屋にも参画している。地元の筑紫野市とは子供達に地産地消の大切さを知ってもらうため、市と生産者と協力してイベントを行っている。
これからnodocaを中心にした地域間の輪を作っていく。五つのエリア(3市2町)を舞台に、nodocaあるいは筑紫ガスを通して、循環の波となる「地域活性化」を作っていきたい。この波が大きくなることで、各エリアが発展し、私たち企業も発展していくだろう。
そのために、まず私たちからnodocaを通じてアクションを起こす。企業の持続的成長のためには地域活性化が必要だ。まち・ひと・企業をつないでいくのが都市ガス事業者の使命だと考えている。
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「リスクを取って挑戦を」:西山卓・日本ガス協会地方部長
日本ガス協会は、2019年から「地域活性化フォーラム」を毎年開催している。これまで、地方ガス事業者の持続的発展に向けたヒントになり得るテーマを取り上げてきた。5回目となる今回は、自治体との連携によって地域貢献するとともに事業成長につながる事例を紹介した。
これまでのフォーラムを振り返ると、1~2回目はそもそも「地域活性化とは何か」がテーマだった。3回目は地域の社会課題を解決するための事例、4回目は民間企業にできることや具体的な導入例を紹介してきた。こうした取り組みを経て各事業者に地域活性化の考えが浸透していることから、醸成ステージは完了したと考える。これからはアウトプットしていき、各事業者の経営にどう落とし込むかという段階だ。
ガス事業者は全国に約190者あり、約190通りの課題がある。解決策に正解がないのが悩ましいが、各社の取り組み実績が増えることで横展開の可能性が広がる。それが持続的な会社、ひいては地域につながっていく。地方ガス事業者には事例などを基にリスクテイクもしっかり見ながら新しい取り組みにチャレンジされることを期待する。
地方ガス事業の事業環境は大きく変化している。カーボンニュートラル(CN)への対応や人口減少、地域経済の停滞などさまざまな課題がある。そのため、日本ガス協会は地方ガス事業の持続的な発展に向けて(1)新たな事業を創る活動(2)持続的な地域に向けた活動――の二つを軸に伴走支援の強化を図る。
(1)の新たなガス事業を創る活動は、CN達成に向けて、クレジットの活用やバイオガスの導入、将来的な地産e―メタン製造への可能性など地域特性に応じた取り組みを推進。(2)の持続的な地域に向けた活動は、各地域の共通する課題を抽出して勉強会で共有するほか、新たな取り組みに立ち向かう際の突破力を養う人材育成にも着手する予定だ。