「共に創る」をテーマに、日本ガス協会(JGA)は11月7日、DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラル(CN)の実現に向けた技術開発情報の収集・発信の場「GasInnova(ガスイノーバ)」を東京都中央区のベルサール東京日本橋で開催した。約800人が参加。基調講演を含む5件の講演と73件のポスター発表、2023年度技術大賞・技術賞の表彰式を行った。11月13日から28日の間には会員専用サイトで講演動画を配信した。JGAの早川光毅専務理事は冒頭のあいさつで、「ガスイノーバを通じ、将来のガス事業の発展に向けたイノベーションの鍵を見い出してみなさまの課題解決の一助となることを期待する」と述べた。
●「基調講演」ガス・イノベーションとカーボンニュートラルの推進
東京大学未来ビジョン研究センター梶川裕矢教授
イノベーションとは「ValueCreationwithSomethingNew」。サムシング・ニューは技術やビジネスモデルを指し、バリューは、経済的な意味だけでなく社会や環境など多面的な価値を生むものと捉える。重視されるのは「新たな社会像の提案」。実現のためにルールを策定し、マーケットを付随させることだ。カーボンニュートラル(CN)の推進はまさにこの文脈で語ることができる。
ここ数年で世界中の動きがCNに向け加速した最大の要因は再生可能エネルギーの導入拡大だ。特に太陽光発電の劇的なコスト低下がけん引した。豪州の研究者が高効率太陽光発電デバイスを開発したことをきっかけに、その門下生の中国人留学生たちが会社を立ち上げた背景もあり、市場規模2兆円とされる太陽光発電分野ではその大半を中国新興企業が押さえている。日本も高効率太陽光を開発していたがスピードとコスト競争に勝てなかった。
「イノベーターのジレンマ」という言葉がある。大企業が顧客の要求を満たすため研究開発に注力し過ぎるあまり、新しい視点を得られず軌道移行に失敗し、他の企業に顧客を奪われてしまうものだ。そうならないために本業のもうけを新たな視点の投資に回す「両利きの経営」が必要だ。
CN化を考えた時、鉄鋼など電化が困難な産業を「ガス」によりCN化するには、コストも大事だが太陽光発電普及の要因となったFIT(固定価格買取制度)のようにルールメイクが重要だ。懸念点としては、水素は海外産ではエネルギー変換損失や供給コストの低減が課題で、高価な国内再エネもネック。メタネーションについては、長期的な視点でのインフラ更新も視野に入れるべきで、炭素サイクルも適切に評価されなければならない。
ガス・イノベーションやCNの実現には、まずルールを形成し、市場を作り出すことがポイントだ。つまり、技術や事業の優位性だけでなく、レジーム(ルール、制度)の設定、ESG投資やTCFDなど世の中に受け入れてもらいやすい仕組みも並行して進行させることが必要となる。
ガス業界がCNのために事業の軌道移行と投資戦略を考える時、移行期の技術は、天然ガスの利用や化石資源のCCS(CO2の回収・貯留)、CO2を使ったメタネーション、水素混焼などの選択肢がある。移行後は、再エネ電力の普及拡大を第一に、グリーン水素と水素インフラ、メタネーションとの組み合わせ等が選択肢。CNに向け、両利きの経営が求められ、移行期の技術で収益化・延命化を図りつつ、移行後の技術に投資する必要がある。今まさにガス業界のシステム全体の構想力、戦略策定力が問われている。
●「制度動向」都市ガスのCN化に向けた挑戦~現状と未来
日本ガス協会CN推進センター長奥田篤氏
日本ガス協会は2050年にガスの90%をe―methane(e―メタン)に変えるなどして、CN化の実現を目指す。
トランジション(移行)期は、石油・石炭から天然ガスへの転換が重要となる。7月28日に閣議決定されたGX推進戦略には、主要5業種に石炭自家発の燃料転換などへの集中的な支援を行うと記載されるなど、天然ガスの有効性が改めて示された。このほか、エネルギーの面的利用、高効率機器の普及やZEB(ネットゼロエネルギービル)・ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)などによる省エネも重要だ。
供給側ではバイオガスの普及促進も進む。製造段階でCO2を吸収しており、燃焼してもCO2排出量の報告が不要だ。日本ガス、北陸ガスが取り組んでおり、各地域でエネルギーを地産地消していくことが重要だ。
炭素クレジットは、ボランタリークレジットを用いたCNLNGの導入例が増加。Jクレジットは、ガスとセットで提供する取り組みが出てきている。
e―メタンの大きな役割は、(1)熱需要の脱炭素化(2)社会コストを抑制した脱炭素化――の二つ。グリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画、GX実現に向けた基本方針などのエネルギー政策にe―メタンが記載されたほか、水素の基本戦略や骨太方針2023にも記載がある。
社会実装に向け、都市ガス大手が中心となり、世界各地でプロジェクトを推進しており、海外でもe―メタンを見直す傾向が出てきている。
社会実装に向けた課題もある。技術については、高効率化による低コスト化が期待できる革新的な技術開発を東京ガス、大阪ガス、東邦ガスが進めている。
商用化支援は、30年の1立方メートル当たり120円、50年の同50円の実現に向け、LNG価格との差額を補てんする支援が必要。審議会等では、LNGとの価格差を念頭においた支援策、水素・アンモニアと同等の支援、ファーストムーバー(先行者)の支援などがテーマとなっている。
CO2のカウントルールは、「利用時排出ゼロ」の燃料と位置付けることが重要。国際的には、利用側が環境価値を享受できるカウントルールが望ましく、国際ルールに位置付けられることを目指して各種活動を行っている。
証書はe―メタンとバイオガスの普及拡大を促進する手段として環境価値の移転を可能にする「クリーンガス証書(仮称)」の制度設計を進めている。
●「環境戦略」富士フイルムグループの脱炭素社会に向けた取り組み
富士フイルムホールディングスESG推進部環境・品質マネジメントグループ統括マネージャー岩間秀司氏
富士フイルムグループの長期的なCSR(企業の社会的責任)計画が「サステナブル・バリュー・プラン」で、具体的なアクションプランが中期経営計画「VISION2023」だ。3年ごとの中計に二酸化炭素(CO2)の削減目標を設定し、気候変動対策を促進している。
サステナブル・バリュー・プランの重点課題は、(1)環境(2)働き方(3)健康(4)生活――の四つ。環境は最も重要な課題で、製造で使用する電力・燃料の両面で脱炭素化を推進していく。
当グループは1960年代にボイラーと蒸気タービンを使ったコージェネレーション設備を導入し、蒸気・電力の効率的な供給を開始した。燃料は重油がメインだったが、2003年には国内のほぼすべての拠点で天然ガスに転換した。業界内では非常に早い取り組みと自負している。
脱炭素目標として、(1)「スコープ1、2(直接および間接排出)」を30年度までに19年度比50%削減、40年度までに実質ゼロ化、(2)製品ライフサイクル全体の排出量を30年度までに19年度比50%削減――を掲げている。CO2排出量が多い事業から撤退するのではなく、社会的ニーズに対して供給責任を果たしながら、脱炭素社会の実現に貢献していく。
スコープ1の削減では、高効率コージェネ設備の更新などによってエネルギー供給システムの効率化を進めながら、30年以降は燃料の脱炭素化にも取り組む。スコープ2については再エネ発電設備の導入や再エネ電力の調達等を進める。スコープ1、2共通の取り組みとして、生産プロセスの改善による省エネにも取り組んでいる。
ものづくり企業にとって、省エネは大変重要であり、(1)フィルム塗布方式の見直しによる乾燥負荷低減など、製造条件に踏み込んだ生産プロセスにおける省エネ設計の推進と実装(2)動力部門主導の工場生産計画の立案など、エネルギー利用効率を高める生産計画の立案と実施――に力を入れている。
電力の脱炭素化は、再エネのポテンシャルといった地理的要因が重要となる。オランダ工場は使用電力を100%風力発電由来としたほか、中国は太陽光などの部材が安いため、太陽光発電が中心だ。日本ではVPPA(仮想電力購入契約)や洋上風力などを活用していく。
燃料の脱炭素化も進める。高機能フィルムの製膜・乾燥工程で使用する高温蒸気の生成には電力より熱の活用が効果的。CNの実現には燃料の脱炭素化が必須となる。
コージェネ設備の燃料の脱炭素化手段としては、水素、アンモニア、メタン、オンサイトメタン、CN都市ガスがあり、どれが普及しても対応できるように準備を進めている。
燃料の脱炭素化は、他社と協業して進める。神奈川事業場足柄サイトは30年までにCN化する「CNモデル工場」と位置付けており、東京ガス、南足柄市と包括連携協定を締結し、各種の検討を進めている。
●「既存事業」DX東京ガスネットワークのデジタルトランスフォーメーション実現に向けた取組み
東京ガスネットワーク技術革新部技術統括グループ課長阿部蔵人氏
ガス導管事業はインフラ設備の高経年化や人材の高齢化などの問題に直面している。保安の維持向上という責任を果たし続けるため、3K(きつい、汚い、危険)のイメージがある導管工事現場の生産性向上や労働環境の改善が急がれている。近年の自然災害の激甚化で、レジリエンス強化も大きな課題だ。
このような問題意識から、当社では幅広い分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでおり、モノとヒトの二つの観点から活動内容を紹介する。まずモノの観点では、技術開発やITの分野でスマート保安の取り組みを進めている。
技術開発の事例としては、ガス漏れ受付における音声自動認識などの人工知能(AI)ツールの導入がある。例えば、顧客との会話の中でガス漏れなど特定の単語を検出すると、対応マニュアルや指示事項が表示される。これにより依頼指示の漏れが防げ、二次災害リスクを低減する。他には緊急保安業務における自動配車システムも導入した。次々と入る通報情報に対し、各車両の稼働状況を捉えて最適な車両を見つけ出せるシステムだ。
IT分野では、当社と工事会社が共通で使用できる導管工事の進ちょく管理アプリを導入した。関係者間の調整が多い工事では進ちょく状況の把握が一苦労だったが、アプリ導入により正確かつ即時の情報共有が可能になった。また、他工事巡回業務における業務管理支援システムも導入した。危険度を数値化し、リスクの高い案件に優先的に対応することで保安の維持向上を実現している。
次にヒトの観点で、DX人材の育成について紹介する。当社では自ら気づいた課題について周りを巻き込みながら解決・変革する熱量を持つ人材をDX人材と定義する。こうした人材の育成のため、(1)学習機会(2)実践機会(3)ツールーーの三つを提供している。
学習機会では、DX人材育成研修プログラムを用意しており、デジタル技術を業務で活用できる人材を育成する基礎教育と、プロジェクト推進の中核となる人材を育成する発展教育に大別される。既存社員は希望制だが、新入社員には今年度から基礎教育の受講を義務付けた。
実践機会の提供の場は2つで、一つは「わくわくBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)フェスティバル」。2021年度から開催しており、3回目の今年度は他部署でも採用できる「横展開BPR」などのカテゴリーを新たに設けて実施中だ。もう一つは、技術技能大会でのRPA競技新設。実務に近い課題のシナリオを制限時間内にプログラミングする競技で、今年度が初開催だった。
3番目のツールについては、育ちつつあるDX人材に対し、汎用性の高いツールを提供する。例えば今年8月からはチャットGPTの提供を開始した。今年度はアカウントを絞ったが、次年度は希望者全員が利用できるようにする。
●「新規事業」DX洗剤レスIoTコインランドリーが導く未来~時代のニーズに応えるDX・GX~
wash‐plus代表取締役社長高梨健太郎氏
当社はちょうど10年前に千葉県浦安市で創業した。父親の代から不動産屋を営んでいるが、東日本大震災で土地の価値が下がったことなどで商売が成り立たなくなると考え、新規事業としてコインランドリー事業を始めた。
当時のコインランドリーは、洗濯機と乾燥機を別々に置いた郊外の大型店が多かった。そこで洗濯乾燥機中心の10坪程度の都市型店舗を出すことにしたが、それだけでは差別化戦略として不十分だと考えた。そこで付加価値として思い立ったのが洗剤を使わない洗濯機だった。
アトピー性皮膚炎の子どもを持つ親の苦悩に触れたことがきっかけだった。寝具などの洗濯でコインランドリーを利用したくても、洗剤が自動投入されてしまうため、使えないという悩みを多く聞いた。
そこで99・9%水のアルカリイオン電解水だけで洗濯する技術を開発した。自社でアルカリイオン電解水を生成する体制も整え、1号店を2013年3月にオープンした。現在は17人の社員を抱え、店舗は直営とフランチャイズを合わせて全国に50カ所ほどに増えている。
洗剤レス以外にも、さまざまな新機能や新サービスの開発に取り組んでいる。例えば、コインランドリーを操作できるアプリの開発だ。洗濯機利用の事前予約や洗濯終了時刻の通知、電子マネーの使用など利用者から寄せられる要望は全てアプリにより解決した。19年に完成し、ダウンロード数は約30万件。他社のランドリーでも使え、対応店舗は331カ所に増えている。
アプリには、ランクが上がれば利用できるサービスが増えるステータス機能を取り入れた。例えば、最上ランクになれば事前予約が可能になる。また、終了後3分以内に洗濯物を回収すればランクアップに必要なメダルが2倍たまるという仕掛けも導入し、事業者の大きな課題である洗濯物放置の改善につなげている。
洗濯機本体も進化させている。そのひとつがタッチパネルの導入だ。これにより洗濯コースの数に限りがなくなり、例えば海岸沿いの店舗ではウェットスーツモードという独自コースを設定できるなどの工夫が可能になった。
アプリ利用を通して得られたビッグデータを基にダイナミックプライシングの機能も開発した。人工知能(AI)が自動的に分析して、曜日や時間帯の利用実績の他、当日の天候も考慮に入れて5段階の価格設定を行う。同機能を導入した店舗は現在7カ所だが、実際にピークシフトにつながり、売上が20~40%増えるという効果が出ている。
ホテルや分譲マンションのランドリー開発にも乗り出している。分譲マンション用の開発は大阪ガスマーケティングから依頼があった。プライバシー保護やアレルギー対策が通常の店舗以上に重要になるなどの課題があったが、当社のノウハウで対応可能で、新築物件への導入に向けて検討が順調に進んでいる。
●「技術賞表彰式」14件を表彰、講演も
2023年度技術大賞・技術賞表彰式を開催し、技術大賞2件、技術賞12件(ガス技術部門8件、サービス技術部門4件)に表彰状と表彰盾を授与した。
技術大賞を受賞した「ガス導管内露点・圧力遠隔管理システム」の開発、「ツナガルde給湯器を活用したデジタル接点強化」の担当者が開発した技術について講演した。
●「ポスター発表」参加者と開発者が情報交換
ポスター発表会場では、都市ガス事業者などが73件のポスター発表を行った。会場には情報交換のためのスペースも設置。参加者と開発担当者が最新の技術等について活発に情報交換を行った。
CNの発表は18件。東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスはメタネーション技術等を紹介した。このほか、ガス事業基盤技術は31件、デジタル技術・サービス技術は24件の発表があった。
【GasInnova(ガスイノーバ)出展企業紙上技術紹介特集】
ガスイノーバでは多くのガス事業者・ガス関連機器メーカーがポスター発表を行った。ポスター発表を行った企業の中から、ガスエネルギー新聞が選定した企業10社の最新技術を紹介する。
●アズビル金門―ガス事業者とガス利用者をつなぐ「スマート保安ソリューション」のご紹介
○問い合わせ=営業本部SMaaS事業推進部・電話03-6258-5352、営業本部ガス機器営業部・電話03-6258-5343、URL=https://ak.azbil.com
当社はガスイノーバにおいて、新たな付加価値を提供するSMaaS(SmartMeteringasaService)事業の一例として、高機能普及型膜式スマートメーター「NX―U/JX―U」とガス事業者向けクラウドサービス「ガスミエールC」で構成するスマート保安ソリューションを紹介しました。
「NX―U/JX―U」は、震度5強相当の揺れを検知すると遮断し、その後自動的に漏えい確認を行い、異常がない場合には自動で復帰する「感震遮断時の自動復帰機能」を実装しています。メーター復帰方法などに関する問い合わせが少なくなれば、緊急性・重要性の高い連絡を確実に受けられるようになります。
また、圧力センサー内蔵による各種保安機能を有し、高速通信・省電力のUバス通信方式採用による遠隔での遮断弁開閉により早期安全を確保できるといったメリットがあります。さらに、従来からご使用いただいているNB(JB)型・NS(JS)型膜式メーターからの改造も可能で、リーズナブルにスマート化への移行が可能です。
「NX―U」「JX―U」の発売と同時にサービスを開始した「ガスミエールC」は、クラウドに集められた1時間ごとのガス使用量、圧力を専用サイトで確認でき、容易に遠隔検針を始めることができるなど数台程度からの試験導入も可能です。1時間ごとの使用量データが得られるため、季節や時間帯から給湯用や暖房用などの用途を推定した計量が可能で、遠隔検針により、検針時のヒューマンエラーや検針員不足といった課題解決に貢献します。
さらに採用事業者から高く評価されているのが、圧力データの高頻度収集、メーター内の従来の圧力スイッチを圧力センサーに変え、1時間ごとの圧力値を把握できることです。例えば片ガス導管の端にこのメーターを設置すれば、導管内圧力の余力の有無を確認でき、導管を現状のままで良いのか、口径を拡大すべきかの判断の根拠となり、導管の最適化を図ることが可能です。スマート保安が重視されていることから、レジリエンス強化策として、クラウドサービスが重要になってきています。まずは小規模スタートでの導入を提案いたします。
●アンドパッド―導管データの三次元化技術の開発と新プロダクト、「ANDPAD3Dスキャン」について
○問い合わせ=電話03-6831-4550、メール=info@andpad.jp
「ANDPAD」は現場の効率化から経営改善まで一元管理できるシェアナンバーワンのクラウド型建設プロジェクト管理サービスです。直感的で使いやすさにこだわった開発と導入・活用への徹底したサポートで、利用社数18万1千社、46万1千人以上の建設・建築関係者が利用しております。
今回、都市ガス導管事業における施工・維持管理業務のさらなる効率化を目的に、東邦ガスネットワークとともに導管データの三次元化技術の開発を行い、新プロダクト「ANDPAD3Dスキャン(ベータ版)」をリリースしています。
「ANDPAD3Dスキャン」は、ガス管の敷設状況の点群データを取得後、クラウド上で共有し、施工管理アプリを通じて、早く・正確にガス管敷設情報を取得、共有、管理可能になります。施工後の現場測量、竣工図書作成、検収、GISマップなどへの反映の一連の業務の効率化を目的としています。新技術を使った現場のDX化を行うことで、「これまで以上に生産性の高いガス工事現場の実現」に寄与します。
従来、ウォーキングメジャーでの計測や手書きメモ、紙での報告書作成・管理を行っていた業務が、ANDPAD3Dスキャンを使うことにより、現場をスマートフォンで撮影するだけで埋設状況を3Dデータとして取得できます。案件に参加している担当者であれば誰でも案件資料、図面、写真、工程表などと一緒に3Dデータをクラウド上で閲覧できるようになります。
位置情報や3Dデータ上で計測した寸法が合わせて保存されており、竣工図・竣工データとして活用でき、現地での再調査回数、提出物の差戻し、検収時の確認工数の削減、また施工、検収、維持管理での完全ペーパレス化を目指します。
2021年3月より共同プロジェクトを開始し、23年現在、「ANDPAD3Dスキャン」の活用を既存業務に組み込み現場検証の結果、実現可能性と効率化効果が確認できています。
アンドパッドでは、「ANDPAD3Dスキャン」を先行して活用いただける都市ガス事業者を募集しております。
〇開発者・営業担当者のコメント
紙での運用で最適化された環境に、点群・深度センサ―・3Dなどの新しい技術を受け入れてもらうのは非常に困難でしたが、埋設状況を3Dデータとして記録できることはそれ以上の価値があります。見える部分であれば、再現地調査などを複数回行えば、記載ミスがあっても運用でカバーできますが、埋設部分になってしまうと工事士が正確に情報を毎回記録する必要があります。このツールでは、スマートデバイスに搭載されたLiDAR(深度センサー)を使った3Dデータ生成を行うことで、精度が担保されたデータが確実にすべての現場で記録できるという世界を目指しています。今後はガスだけではなく、水道管、地中電線などの他埋設も共有できるプラットフォームを作っていくことで、他社との協議時に正確な情報を共有し、作業の効率化と事故防止にも寄与できるツールにしたいと考えております。
●大阪ガスネットワーク―3D写真技術を活用した導管工事竣工後の業務効率化
○問い合わせ=マーケティング推進部マーケティング企画チーム・電話06-6205-4656
大阪ガスネットワークは、3D(三次元)写真技術を活用し、導管の配管形状や延長、使用した継手材料などをデータ化し、竣工図面や検収業務、導管マップデータとして活用することで、竣工後の業務効率化が可能な技術を開発中です。また、自社業務の効率化や品質向上につなげるだけでなく、他事業者への提供で新たな収益を目指します。
現在の運用では、工事会社の担当者が野帳に深さ、延長などの情報を手書きで記録し、帰社後、システムで竣工図を作成しています。大阪ガスネットワークの検収担当者が、その内容を検収した後、導管マップシステムのメンテナンス担当者が竣工図を基にマップシステムを手動で更新します。
開発中の技術を活用すれば、現場で敷設した導管全体を、専用アプリケーションを搭載したスマートフォンで動画撮影するだけで、竣工図作成に必要なデータの抽出が可能です。1カ所の動画撮影は1分程度で完了します。
帰社後、専用アプリケーションを搭載したパソコンで、撮影したデータを3D処理すると、自動的に実物と誤差1~2%程度という高精度な3Dモデルデータが生成されます。他の埋設物等の影響で死角となり、導管の一部が撮影されていない場合でも、3Dモデルデータとして表示させることが可能です。また、長延長の工事では、複数日に渡って工事を行うが、日々記録した3Dモデルデータを結合させることも可能です。
さらに、事前にソケットやエルボーなど継手材料の画像情報をAI学習させており、工事で使用された継手の種類や数量等も自動的に集計することが可能です。
将来に向けて、導管マップシステムへの自動連携機能も検討中です。これらにより、竣工図作成や検収等にかかる工事会社や大阪ガスネットワーク社員の業務負荷を大幅に軽減できます。また、専用アプリケーションは、現場の作業員がデジタルに精通していなくても使用に困らないような簡易な操作性と、堅牢性を重視して開発しています。
大阪ガスネットワークは、今後、工事管理システムやマップシステムといった基幹システムへの連携を実現させ、2024年10月頃の実用化を目指しています。また、他のガス事業者への展開の可能性も検討していきます。
●グローバルネットコア―定期保安・開栓閉栓・ガスメーターの期満交換SaaS型ウェブ受付システム「G-THANKS」―翌日以降の予約日時を検査員と即時共有
○問い合わせ=ソリューション営業部・本間孝二・電話025―244―0191
定期保安検査(定保)業務をメインに開栓閉栓の受け付けやガスメーターの期満交換(検満)の申し込み受け付けをウェブ化し効率化する「ウェブ受付システムG―THANKS」の販売を開始しました。
蒲原ガス向けに開発したシステムが大幅な業務効率化につながったことから、他のガス事業者も高い導入効果が得られると見てパッケージ化しました。
同システムは、需要家がウェブサイトにアクセスすると、画面上に表示される各検査員の訪問可能日時の中から希望の日時を選択して予約できます。
ガス事業者と、ガス事業者から委託を受けて検査、開栓閉栓、メーター交換作業を行う作業員は、パソコンやスマートフォンを使い、それぞれの管理画面から顧客の予約状況をリアルタイムに確認できるため、スケジュール管理にも有効です。
ウェブ受け付けを用意することで、検査員や需要家との電話での日程調整に多くの手間・時間がかかる課題を払しょくし業務効率を向上させることができます。
定保業務で利用している蒲原ガスさまでは電話での受け付けや日程調整にかかる業務時間は月11時間から約60%削減され4時間に短縮できました。予約が容易になったことで予約件数はこれまでの3倍に増加し、訪問しても検査できない「空振り」が減少。検査員1人当たりの作業時間は月平均約10%も短縮する効果が確認されております。
すでにウェブでの予約受け付けを実施している事業者もあるなか、受け付け後に電話等で日程調整する業務は残されており、合理化の効果は限定的のようです。
翌日以降の受付を可能としているG―THANKSは需要家とガス事業者、検査員の3者がシステム上で予約状況をリアルタイムに共有でき、受け付け業務全体の大幅な合理化につながります。
また、検査員も自身が受け付け日時を時間単位で登録が可能で大型検査のための受け付け停止の設定、休暇などによる受け付け停止など受付可否をはっきり示すことで業務効率化、働き方改革の一助にもなります。
G―THANKSは初期費用40万円(税別)、ランニング費用月々3万8千円(税別)と、事業規模を問わず導入しやすい価格としました。また、デモ画面をご覧いただくと、操作性、利便性を理解いただきやすいと思います。お気軽にご連絡ください。
●光陽産業―「ガスコンセント(埋込)(埋込電気二口付)」の改良
○問い合わせ=第二営業部・電話03-5702-1221
当社は、東邦ガスネットワークと共同で、居室用壁埋込ガス栓の作業性向上を目的として、ガスコンセント(埋込)、ガスコンセント(埋込電気二口付)の2製品の改良を行いました。
改良仕様設定に当たり現場作業者の生の声を聞くため、試作品を持って日々実現場で施工している工事従事者へヒアリングを実施しました。現行品の課題や試作品の使用感について意見を集約したうえで、より一層「使いやすい仕様」へ改良を行いました。
改良ポイントは大きく3点あります。
(1)施工性向上(ガス工事事業者様の声)
初心者でも迷いがない施工を目指し、壁内でのねじ止め作業や化粧プレートの調整作業の省力化を図り、「コツや慣れ」を排除した結果、施工時間の短縮を実現できました。
既存品と比較して、先付施工では、ガスコンセント(埋込)は、施工時間を50%短縮でき、同(埋込電気二口付)は35%短縮できました。
後付施工では、同(埋込)は30%短縮、同(埋込電気二口付)は、25%短縮できました。
(2)迅速継手(ガス栓側ソケット)の全長ショート化に対応(ガス栓を使用するお客さまの声)
現在販売されている迅速継手(ガス栓側ソケット)は、以前のものより全長が短くなっております。
現行品のガス栓は、壁面が厚くなるほど、ガスコンセント口が壁奥へ位置してしまい、迅速継手の接続や取り外しが難しくなります。特にご年配の方から、接続しづらいとのお話を多く聞きました。
改良品は、常にガスコンセント口が一定位置に配置されるように改良いたしました。
(3)先付施工時のガス栓設置位置探査機能(ガス工事事業者の声)
先付施工時(ガス栓設置後、壁の施工)において、ガス栓設置位置が目視できなくなるため、別な箇所へ穴あけをしてしまい、壁の再施工が発生するため、対応策の検討依頼がありました。
そこで、確実な探査を目的に、ガス栓用磁石探査治具の新規開発をいたしました。改良しましたガス栓で、ガス栓用磁石探査治具の対応は可能となります。
今後について、現在量産準備を進めており、2024年春ごろをめどに販売開始を目指しております。また、衣類乾燥機向けに電気二口コンセントアース付のラインナップを検討しております。
●JFEエンジニアリング―中圧ノーブロー工法適用口径の拡充および装置国産化
○問い合わせ=エネルギー本部営業統括部ガス営業部・電話045-505-7141(代表電話)
当社と東京ガスネットワークは、活管分岐・遮断工法である中圧ノーブロー工法に使用する継手のラインナップを拡充することに成功しました。これまでの100A~750Aの継手ラインナップに新たに小口径の80Aを加え、これにより小口径を保有するガス事業者に対しても本工法を提案できるようになりました。さらに、ノーブロー施工装置の国産化開発により、施工装置の提供・補修も可能となりました。
ガス導管工事においては、新規需要に対応するための分岐工事や他工事に伴う移設工事、設備更新に伴う取替時の遮断工事などが多く発生します。通常は、これらの工事は上下流のバルブを操作し、ガス供給を停止または本管内を減圧してから施工しなければならないため、需要家との調整など多くの制約がありました。しかし本工法は、これらの調整が不要であり、さらに運用中のガス導管に対し活管状態で分岐工事や遮断工事ができるため、需要家への供給を継続したまま工期の大幅な短縮が可能となります。
当社は、ガス事業者の強い要望を受け1982年から海外技術を国内導入する形でノーブロー工法の開発を行い、小口径から順次現場適用を進めてきました。継手構造の改良を重ねた後、1995年より現方式の施工法が確立されましたが、継手・施工装置とも海外から輸入して施工していたため、継手の発注から納品までに半年以上のリードタイムが必要でした。
さらに施工装置の修理・メンテナンスにも時間を要し、材料供給の調整や施工装置トラブルへの迅速な対応も困難でした。そこで、2011年より東京ガスネットワークと共同で、主要な口径である100A~300Aの継手国産化に取り組み現場導入を進めてきました。
さらに2020年からはノーブロー施工装置の国産化にも成功し、2024年度から現場導入予定となりました。これらの開発・国産化により、今まで提供してきた材料供給・敷設施工のサービスに加えて、施工装置の提供・補修にも対応可能となります。今後も当社では、適用口径の拡充を推し進めるとともに、ガス事業者の多様なニーズにお応えしてまいります。
●Daigasエナジー―(1)石灰焼成炉(ライムキルン)向け天然ガス・重油混焼バーナー技術を活用した省エネ・省CO2の達成、(2)業務用小型圧力調理器の開発
〇問い合わせ(1)ビジネス開発部技術開発チーム井上智博tom-inoue@osakagas.co.jp、(2)ビジネス開発部技術開発チーム大川諒r-ookawa@osakagas.co.jp
〇石灰焼成炉(ライムキルン)向け天然ガス・重油混焼バーナー技術を活用した省エネ・省CO2の達成
国内のライムキルンでは主にC重油など油燃料が使用されており、一般的に天然ガスを使用すると、火炎の輝度が下がることなどにより、焼成原単位が悪化する問題がありました。
本バーナーは、重油を霧化させるための蒸気や高圧エアの代わりに天然ガスを用いることで、熱量割合で約30%を天然ガス化させる混焼バーナーです。これにより、火炎の輝度は保ったまま、火炎形状を変化させやすいという重油と天然ガスの双方のメリットを両立する燃焼を実現しました。また、重油霧化用の蒸気や高圧エアを削減できるため、蒸気発生用のエネルギーや高圧エア用の電気も削減できました。
さらに、バーナーガンのみの交換だけで天然ガス化が図れるよう設計しているため、本混焼バーナーへの交換に要する時間は2時間以内で、キルンの停止時間を最小限にすることが可能である。
これまで実施してきた現地実炉テストでは、キルンごとにノズルをオーダーメイドで設計することで火炎形状、炉内温度分布を最適化し、5~13%の省エネ、平均約20%程度の省CO2を達成できた。本混焼バーナーをキルン3基で採用いただいている大王製紙三島工場さまでは、年間1・9万㌧のCO2削減を見込んでいる。
〇業務用小型圧力調理器の開発
本製品は、業務用小型圧力調理器では国内初となる日本ガス機器検査協会(JIA)の認証を取得した安全性の高い製品であり、圧力調理での調理時間削減により省エネおよび作業効率向上に寄与します。
外食産業において労働生産性や人手不足等の課題や、近年のエネルギー価格等、物価高騰の問題があり、時短調理や省エネに対するニーズが高まっています。
現状、ガス式製品は大型しかラインナップがなく、調理量の比較的少ない外食中食店舗等への普及は進んでいません。
そこで、時短調理・省エネに資する圧力調理器のニーズを確認し、市場にない小型機を開発することで、業界の課題解決を目指しました。
圧力調理は、具材に通常よりも短い時間で火を通すことができるため、加熱時間の長い煮込み料理などに向いています。例えば大豆煮物では通常と比べて調理時間を5割以上削減、エネルギー使用量やCO2排出量を7割以上削減でき、美味しさはそのままに大幅な省エネを達成することができる、カーボンニュートラルに貢献する製品といえます。
また、圧力や温度を適切に制御するプログラムの開発(特許出願中)により蒸気の吹出音を低減し、圧力調理器に慣れていない顧客でも安心して使用できる製品を実現しました。
●東京ガスネットワーク―(1)灯内内管の漏えい位置可視化技術の開発~漏えい位置特定検査「ピンポンサーチ」の可視化~、(2)高圧ガスパイプライン屋外配管施設漏えい監視技術トライアル
○問い合わせ=技術革新部技術研究所・電話045―505―7301
(1)灯内内管の漏えい位置可視化技術の開発~漏えい位置特定検査「ピンポンサーチ」の可視化~
ガス灯内内管の漏えい位置を特定する検査「ピンポンサーチ」の測定結果を可視化することで、個人の経験やノウハウに頼らずにさらに高い精度でガス漏えい位置特定を行なえる検査業務を実現します。
顧客宅内の床下や壁の中など、隠ぺい部でガス漏えいが起きた場合、現在は「掻き分け治具」「管内カメラ」「ピンポンサーチ」の三つの装置を駆使して漏えい位置の特定を行い、床下や壁を開口して配管の修理を行っています。もし、漏えい位置を誤ると開口面積が大きくなり、必要以上に工期、費用が増大してしまいます。
ピンポンサーチは、発信機を事前にガス配管内部に挿通し、発信機から発せられる電磁波を受信機で受信し、音(玄関のチャイム音風の音)に変換する装置です。ピンポンサーチは手軽な装置ですが、受信機の向きにより聞こえ方が変わるため漏えい位置の特定に経験を要します。音の強弱で発信機の位置を探索するため、発信音の聞こえ方に個人差があるという課題があります。
そこで、音の可視化・計測技術を保有する早稲田大学及川研究室との共同研究により、発信機の電磁波を画像で表示して目で判断する漏えい位置可視化装置を開発しました。漏えい位置可視化装置は、受信コイル、ARマーカー、アイパッドで構成しています。現在、社内緊急保安部門であるガスライト24にて、フィールドテストを実施中です。
主な機能はマッピング機能と発信機位置の推定機能です。マッピング機能とは、電磁波をコイルで受信し、ARマーカーとアイパッド内蔵カメラにより受信した位置を画面上に電磁波の強度とともに表示するものです。発信機位置の推定機能とは受信した電磁波の複数点のマッピング完了後、全体の受信強度から最も電磁波の発信源に近い箇所を自動で算出し、画面上に表示するものです。
可視化による発信機位置の見える化により、精度よく漏えい位置を推定することで工事の開口面積が最小限に抑えられます。
現在は、本運用を目指しフィールドテストで課題を抽出しつつ、システムの更新を随時行っています。例として、ノイズ除去のため著しく大きな異常値を取り除く機能や、位置ずれを考慮してプロットするタイミングを変更する機能、プロットの透明度を変更して視認性を向上する機能の追加などを行いました。引き続きユーザーインターフェースの向上、および使用環境、用途の拡大を進め、確実にガス漏えいを検知することを目指して、開発を進めてまいります。
(2)高圧ガスパイプライン屋外配管施設漏えい監視技術トライアル
東京ガスネットワークは、高圧ガスパイプラインにおけるバルブステーション等の巡視点検を実施しており、その中で点検員の嗅覚および可搬式のガス検知器による漏えい有無の確認を実施しています。漏えいの早期発見による保安の向上および省力化を目的としたバルブステーション等の屋外配管施設のガス漏えいを遠隔検知するシステムを開発し、現在トライアルを実施しています。
本システムは東京ガスエンジニアリングソリューションズのレーザー式メタンセンサーである「レーザーファルコン」を耐候性のボックスに収容し、360度回転する台座の上に設置することで、幹線ステーション内全域の配管の漏えいを面的に常時監視します。漏えいを検知した際には、社内システムを介して緊急保安部署を含めた関係部署に自動的に通知される仕組みとなっています。
本システムの特長は大きく二つあり、一つ目は「反射シートを用いたデータノイズの低減」、二つ目は「繰り返し性を利用したガス漏えい判定処理」です。
本システムはレーザーファルコンから照射されたレーザーがバルブステーション等の屋外配管施設の外構壁面等に反射し、受光器に戻ってきたレーザーの波長を測定することでガスの漏えいを検知するものです。しかし、外構壁面の素材等によってはレーザーが乱反射し、測定ノイズが増大してしまうため、ノイズの低減が課題となっていました。そこで、道路標識等に使用される、光の入射方向と同じ方向に反射させる機能を有するシートを外構壁面に貼付することで、安定してレーザーが受光器に戻ってくるようになり、データノイズの低減へとつながりました。
また、ガス漏えい判定処理については、一律的な基準値を設けるのではなく、施設ごとに漏えいがない状況で面的に繰り返し測定します。これにより、その施設特有の定常的な測定値を学習し、学習された定常時データからのズレを判定することにより、高精度なガス漏えい判定を実現しています。
東京ガスネットワークは、今年度より関東近郊数箇所のバルブステーション等の屋外配管施設での現場トライアルを実施しており、来年度以降、実稼働および設置数の増加を予定しております。
●東京ガスエンジニアリングソリューションズ―遠隔ガス検知技術を他のガス検知技術に応用
○お問い合わせ=03-6452-8400
東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、世界で初めて、ガスを吸引せずに遠隔から検知する、ポータブル型のレーザー式メタン検知機器「レーザーメタンシリーズ」を開発・商品化し、これまでに世界で6千台以上を販売、遠隔ガス検知の事実上のデファクトスタンダートとなっています。昨年には、日本ガス協会の技術基準にもレーザー式ガス検知器が掲載され、実質的に法定検査にも使える機器となり、今後益々の利用の拡大が期待されています。
さらに本年度はデジタルカメラを搭載した新製品レーザーメタン・スマートを開発、都市ガス業界を中心に営業展開をしています。レーザー式ガス検知器では、メタンに吸収される特定の波長(およそ1・6マイクロメートル)のレーザーを照射することによって実現されることから、原理的には同様の信号処理技術を用い、照射するレーザーの波長を変えることによってメタン以外のガスの検知が可能なことは広く知られています。しかし、その実現のためにはレーザーメタンに利用されているような高度かつコンパクトな光学および信号処理技術を必要とすることから、当社以外ではこれまでメタン以外のガスに対応した遠隔ガス検知機器は実現されていませんでした。他方、産業界にはメタン以外にも様々なガス検知のニーズがあり、それらを吸引することなく遠隔で検知することができれば、保安の向上やメンテナンスの効率化などにおいて高い効果が期待されています。
このほど当社は、メタン用に開発した製品の中から、産業用メタン検知用途に開発したレーザーファルコン2をベースに、他のガスの検知においても利用可能な信号処理部分をユニット化、他のガスの検知に適するレーザー素子および受信素子を接続することによって、様々なガスの検知が可能な製品を開発しました。これまでメタン検知器の開発によって積み重ねてきた当社のさまざまなノウハウを生かし、都市ガス事業に留まらない新たなガス検知ニーズを保有する企業との協業により、短期間での新たな遠隔ガス検知製品の開発を推進していきます。
●日鉄パイプライン&エンジニアリング(NSPE)―資源と人をつなぐNSPEの最新技術紹介
○問い合わせ=総務部・電話03-6865-6000
〇スリーブ型連絡継手の隅肉溶接高能率化
中低圧ガス導管において鋼管と鋼管の連絡には、スリーブ型連絡継手が使用されます。スリーブ型連絡継手には隅肉溶接を施しますが、従来はティグ溶接、被覆アーク溶接またはその両方を組み合わせた溶接方法が適用されていました。当社は半自動溶接を導入することにより従来溶接方法と同等以上の品質を確保しつつ、溶接時間短縮による高能率化を実現しました。
〇省エネタイプのBOG(ボイルオフガス)再液化設備「NS―RELIQTM」
LNG貯槽のBOG処理において、当社は従来の再液化設備と比較して、LNG冷熱の有効利用による操業コストの低減に加え、機器点数の見直し・簡易機器の採用による建設コストを低減したBOG再液化設備「NS―RELIQTM」を開発しました。「NS―RELIQTM」は、少ない送出ガス量でもBOGを再液化、貯蔵LNGの濃縮緩和を可能としました。「NS―RELIQTM」は、実証設備での検証をもとに、運転コスト削減優先モード、再液化優先モード、省電力最小モードなどモード選択を行うことで、熱交換器配列や回転機インバーター制御、冷熱回収の有無などの選択を自動的に最適化する効率的運転システムです。
〇無線による管内自走式検査ロボット「PipeExplorer」
当社は、既設導管の健全性評価技術の一つである、カナダのPipetelTechnologiesAnInteroCompanyが保有する「PipeExplorer」の国内使用に取り組んでいます。「PipeExplorer」は、搭載したバッテリーにより管内を走行しつつ管内外面の減肉や断面変形を検査することができる自走ロボットです。
搭載したカメラで管内の状態を無線によりリアルタイムで確認しつつ操作を行うことができるため、エルボ部や口径縮小部、T字管など従来、検査が困難であった箇所も内面から検査可能となるなど、優れた特徴を有しています。
〇GIS技術を利用したパイプラインルートのシミュレーション技術「PLRS」
当社で開発したGIS技術(地理情報システム)をベースとした効率的で高品質なルート選定機能を備えたパイプラインルートシミュレーション技術「PLRS」を活用して、パイプラインのエンジニアリング業務に貢献します。「PLRS」は、(1)高い操作性と情報共有性を有し作業効率向上、(2)高精度のパイプラインルートを取得可能、(3)経験の浅い設計者でも合理的ルート選定可能、(4)再調査リスクの解消による短工期・低コストを実現、(5)MobileMappingとの併用で高い秘匿性を確保しつつ一定の調査精度を確保など優れた特徴を有します。「PLRS」は広域パイプラインなど長距離パイプラインの調査や複雑な経由地を伴うルート検討などに大きな効果を発揮します。