GENIX-CN70

192.12

-2.35

5月17日終値

5月17日東証 GENIX-CN70は4週ぶりに下落。総じて利益確定売りに押される展開となったが、中で好決算を発表した岩谷産業、大規模な自社株買いを発表したENEOSが逆行高。
市況情報

 5月17日 GENIX-CN70は前週末比2.35ポイント安の192.12と4週ぶりに下落した。総じて利益確定売りに押される展開となったが、その中で13日に決算を発表した岩谷産業、14日に決算・大規模な自社株買いを発表したENEOSの株価が急伸した。どちらも一時本年高値を更新するなど人気付いた。

 岩谷産業の決算について市場関係者は、「前期実績も今期予想も2桁増益の好決算。ただ今期の配当金予想額が据え置かれたため、株価は急伸後伸び悩んだが、持分法対象のコスモエネルギーの寄与分も見込め、今後増配期待から見直される可能性がある」とする。

 ENEOSの自社株買いは上限が発行済み株式総数の2割強におよぶ大規模なもので、市場にサプライズを与えた。「経営陣の資本効率・株主還元への意識の高さを感じる内容。大型投資がなく、JX金属がIPOに向けて資産売却を進める中、財務体質が良好になっていることが背景にある」(大手証券アナリスト)と見ている。

(2024年5月17日)

 【過去解説記事】

 GENIX-CN70は10日、前週末比2.33ポイント高い194.47ポイントと3週連続で値上がりし、前週に続いて過去最高値を更新した。

 指数構成銘柄では大阪ガス、北海道ガスなどが過去20年来の高値を更新。大阪ガスは8日発表の自社株買いが好感されている。「3月発表の中期計画で株主資本配当率に基づく増配方針が打ち出されたばかりの株主還元策で、サプライズとして受け止められた」(アナリスト)。北海道ガスは4月30日発表の株式分割(1対5)や今期実質増配を手掛かりに人気化している。PBRは0.8倍台に上昇し、課題の1倍割れ解消が現実味を帯びてきた。

 岩谷産業も急伸し、4月に付けた最高値9311円を射程に捉えてきた。同社の3月期決算は5月13日午後2時半に発表予定だが、同社がさきごろ筆頭株主となったコスモエネルギーホールディングスが昨日決算発表を行い、堅調な業績と自社株買い、年間300円配当を維持する方針が明らかになった。コスモエネの株価は本日、一気に高値を更新、岩谷産業の株価支援材料になっている。

(2024年5月10日配信)

  中東産LPG日本向け長期契約価格(サウジCP)5月分は、プロパンが1㌧当たり580ドルと前月比35ドル下落した(下落率5・69%)。値下がりは4月分に続いて2カ月連続。

  ブタンは前月比35ドル値下がりして(下落率5・65%)1トン当たり585ドルとなった。ブタンも2カ月連続で下落した。

(2024年4月26日配信)

 中国税関が18日に発表した3月のLNG輸入量は前年同月比24・1%増の665万㌧となり、3月としては2021年の564万㌧を上回り3年ぶりに過去最高を更新した。1~3月の累計輸入量は同20・4%増の1985万㌧と、年間輸入量が過去最高だった21年同期を0・8%上回った。

 今年第1四半期の国内総生産は5・5%増と昨年第4四半期の5・2%増を上回った。輸出産業を中心に二酸化炭素排出削減のためのガスシフトも進んでいる。同期間のLNGスポット市況が前年同期を4割下回るなど割高感が薄れたことも需要喚起につながったようだ。今後の見通しについてエネルギー・金属鉱物資源機構調査部竹原美佳部長は、「国際市況はこのところ上昇に転じており、LNGスポット調達は目先一服しそうだが、地方政府のガス火力建設推進や船舶燃料のグリーン転換などもありガス需要そのものは高まる方向」としている。

(2024年4月18日配信)

 東証4月12日 東京ガスの株価が一時前日比54円高の3899円と前日に続いて上場来高値を更新した。同社株は今週に入って騰勢を強め、年初からの株価上昇率は20%に達した。3月中旬、大阪ガスの時価総額が一時、東京ガスを逆転したが、東京ガスが再び首位に立ちリードを広げている。4月19日に全国知事会が東京ガス横浜ステーションを視察し、e‐メタン製造実証の説明を受ける予定となっている。カーボンニュートラルに向けた同社の技術力に注目が集まりそうだ。株価上昇により、株価純資産倍率(PBR)は0.94倍へと上昇。1倍乗せが視野に入ってきた。

 都市ガス株では、北海道ガスの株価も上昇基調にあり、この日も前日マークした上場来高値2960円まで一時買い進まれる場面があった。年初からの上昇率は34%に達するが、同社株のPBRはいまだ0.7倍台にとどまり、依然割安感が漂う。北海道では半導体工場の新設で電力消費の大幅な伸びが予想され、北海道電力の株価もこのところ大幅に上昇している。

(2024年4月12日配信)

 4月3日 米原油先物(WTI)は前日比28セント高の85.43ドルと3日続伸、本年の高値を更新した。ウクライナによるロシア主要製油所への無人機攻撃や、イラン大統領によるイスラエルへの報復表明など地政学的リスクの高まりが背景にある。また週間統計で米国原油在庫が前年同期比18.5%減と減少が目立ったことも材料視されている。

 注目されたOPECプラス合同閣僚監視委員会は、生産目標維持を決定。また、米連邦準備理事会パウエル議長は講演で利下げを急がない姿勢を示したとされる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部・芥田知至主任研究員は、「中東、ウクライナ情勢は今後一段と動向が注視される。また、米金融政策、中国当局による経済運営、産油国の生産方針なども引き続き注目される。ただ、米中の景気は石油需要を上振れさせるほどには強くないとみられ、相場の上昇傾向を決定づける材料は出にくいと思われる。相場は再び一進一退の推移となりやすい」と指摘。もっとも、今年後半にかけて米利下げを受けてドル安が進む展開となれば、ドル建ての原油価格には割安感が生じ上昇圧力がかかりやすくなるとし、今年度は1バレル95ドル程度の上値が見込めるとしている。

(2024年4月4日配信)

 GENIX-CN70は年度内最終売買日となった3月29日、前週末比0.55ポイント上昇し189.41と、2週続けて最高値を更新した。3月末割り当てで1対10の大幅な株式分割を実施した三菱重工業は権利落ち後も堅調で、修正株価は連日の最高値となった。GENIX-CN70構成銘柄では他に理研計器が1対2、川崎汽船が1対3の株式分割を3月末割り当てで実施した。

 岩谷産業の株価が3連騰で、連日の上場来高値更新。3月28日にコスモエネHD株式を追加取得し、持ち分法適用会社にしたと発表したことが材料視されている。コスモエネの今期純利益予想は780億円、岩谷産業は335億円。持ち分比率2割相当の利益が来期以降、上乗せされるインパクトの大きさが期待されているようだ。また、会社側は本件株式取得に要する資金を借り入れで賄うとしており、「増資による一株当たり利益の希薄化が回避される見通しになったことも好感されている」(国内証券調査部)という。

(2024年3月29日配信)

 米国3月26日、米パイプラインガス(ヘンリーハブ=HH)先物価格が終値で5日続落し、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.575ドルに下落。2月20日に付けた本年安値1.576ドルを1カ月ぶりに割り込んだ。ザラ場安値は1.4㌦台まであった。

 米エネルギー情報局(EIA)が3月21日に発表した週間データによると、米国の地下ガス在庫量は3月15日時点で前年比21%増、過去5年間の平均値に対しては41%上回っている。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は、「気温が上がり需要が低下して、在庫がさらに積み上がったことと、生産がすぐには低下しないことが主要因」と指摘する。こうした在庫の荷余り感が先物市況の上値を重くしているようだ。

 HH先物価格の過去15年間の値動きを振り返ると、期近先物価格が1ドル台まで下落した年は2012年、16年、20年の3回あり、当該年の安値形成月はそれぞれ、4月(1.9ドル)、3月(1.6ドル)、6月(1.4ドル)となっている。春に安値を付ける習性と、この間の価格水準が切り下がる傾向が見て取れる。

(2024年3月27日配信)

 3月22日、ガスエネ株価指数カーボンニュートラル70(GENIX‐CN70)は2週間ぶりに過去最高値を更新した。GENIX‐CN70構成銘柄はほぼ全面高となり、K&Oエナジー、三菱重工、岩谷産業、大阪ガスなどが最高値を更新した。

 なお、三菱重工(1株→10株)、理研計器(1株→2株)、川崎汽船(1株→3株)は3月28日付で株式分割の権利を落とす。株式分割のメリットとしては、単位投資額の引き下げによる投資家層のすそ野拡大、流動性の向上などが指摘される。昨年以降で、株式分割を実施したリンナイ、NTT、三菱商事、京セラは、権利落ち後も堅調な値動きを保っている。

(2024年3月22日配信)

 3月15日 ENEOSHD(GENIX―CN70構成銘柄)の株価が朝方から買い進まれ、5年3カ月ぶりに700円台に乗せてきた。他にもINPEXや石油資源開発、コスモエネルギーHDなどの石油関連株、資源高が利益に結び付く商社株も軒並み値上がりしている。コスモエネルギーは国内大手証券が投資格付けを引き上げたことも好感され、株価は上場来高値を更新した。

 株式市場は、米原油先物(WTI)が14日、期近4月渡し終値で1バレル81.26ドルと続伸し、昨年11月6日の80.82ドル以来の80ドル台乗せとなったことを材料視しているようだ。国際エネルギー機関(IEA)が同日公表した市場レポートでは、今年の石油需給は供給不足になるとの予測が示されている。産油国の自主減産延長による供給減や、紅海におけるタンカー襲撃で海上輸送距離が延びておりバンカー燃料の需要増加を織り込んだという。もっとも原油市況は過去1年余りにわたって、おおむね70ドルから80ドルのレンジで推移しており、80ドル台では上値の重さも意識されそうだ。

(2024年3月15日配信)

 3月8日 大阪ガス(GENIX CN‐70構成銘柄)の株価が前日比153円高の3350円で寄り付き、直後に230円高の3427円まで上昇。1月11日に付けた上場来高値3242円を一気に更新した。同社は7日、3カ年中期経営計画を策定し、配当を原則減配せず維持または増配する累進配当制度を導入すると発表し、好感された。

 2024年3月期の配当金は前期比12円50銭増配して72円50銭(従来予想65円)に、25年3月期は95円を目指す方針も示した。株主資本配当率を3%とする方針を掲げ、機動的な自己株取得も検討するとした。この他、自己資本利益率(ROE)の目標は26年度に8%程度、投下資本利益率(ROIC)は5%程度を目指す。「株価を意識した経営姿勢に変化していると株式市場が受け止めており、都市ガス株の中でも相対的な値上がりが目立ってきている」(中堅証券)という。この日前場終値での時価総額は、大阪ガスが1.43兆円、東京ガスは1.41兆円となり、大阪ガスが東京ガスを逆転した。

(2024年3月8日配信)

 2月22日 東証では朝方から買いが先行し、日経平均株価は大幅に反発した。終値は初の3万9000円台で、1989年12月以来の史上最高値更新となった。注目された米エヌビディアの決算が市場関係者の事前予想を上回り、3連休控えにもかかわらず、マーケットのセンチメントは強気に傾いた。半導体関連株をリード役に、主力株を中心に幅広く買い進まれた。

 GENIX‐CN70構成銘柄も軒並み上伸した。三菱重工業が上場来高値を更新し、日本酸素HD、川崎汽船は最高値をうかがう動き。原油市況の上昇を背景に石油資源開発など石油関連株も値上がりした。

(2024年2月22日配信)

 米国パイプラインガス市場価格(ヘンリーハブ先物)が2月15日、8日連続安となり、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.5㌦台まで下落、2020年6月以来の安値水準となった。在庫の積み上がりが背景にあるという。

 エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80㌦弱と堅調なことから、パーミアン盆地を中心にシェールオイルの生産が盛んで、随伴ガスの生産量も増えている。気温が高めに推移していることもあり、地下在庫は過去5年間の最高水準に到達している」と指摘。

 先物市場の中心商いが春の需要閑散期に移りつつあることから、市況は当面弱含みで推移しそうだ。
(2024年2月16日配信)

2月12日 米国で天然ガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格=HH)が5日続落し、期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり1.768ドルに下落した。1.7ドル台は2020年7月以来の安値となる。市中在庫が高水準にあり、市場のセンチメントを圧迫している。

HHは昨年11月以降、3ドルを割り込むなど市況の低迷が続いているが、生産量が落ち込む兆しはいまだ見えないという。エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80ドル弱と堅調に推移していることから、オイルリッチなパーミアン盆地を中心に油狙いの生産が盛んになっている。このため副産物であるガスの生産も増加している」と指摘する。

(2024年2月13日配信)

米国市場でガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格)が続落している。7日に心理的な下値めどと見られていた百万BTU(英国熱量単位)当たり2ドルを割り込むと、8日終値は一段安となり1.917ドルまで下落した。およそ3年5カ月ぶりの安値水準となる。

市況下落の背景には、マーケットの荷余り感があるようだ。「このところの気温上昇で暖房用需要が低下しており、地下在庫量は過去5年間の上限レベルに到達している。当面は上値の重い展開が続きそうだ」(エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役)。

ヘンリーハブ価格の下落に伴い、米国産LNGの輸出価格も低下しており、現状は世界の主要輸出国の中でも最も安価な水準となっている。

(2024年2月9日配信)

2月6日 東証後場 三菱重工業の株価が昨日の1万円初登頂に続いて一段高となった。この日午後、同社は3月末割り当てで株式1株を10株に分割すると発表。合わせて発表された今2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高が前年同期比11%増、純利益は同倍増となるなど好調ぶりが明らかになった。通期の受注見通しを6兆円とし、従来予想に4000億円上積みした。これら大幅な株式分割と好調な業績動向が素直に好感され、買いが買いを呼ぶ好循環となっている。

同社株は1年前の2月には5000円前後で推移しており、そこから株価水準はちょうど2倍になっている。

(2024年2月6日配信)

1月31日 サウジアラムコがこのほど日本のLPガス輸入事業者に通知したプロパン2月分出荷価格(サウジ2月CP)は、前月比10ドル値上がりして630ドルとなった。値上がりは昨年8月分(470ドル)以降、12月分の変わらずを挟んで8カ月連続。

LPガス市況に影響する原油市況が、12月初旬を底に水準を切り上げているほか、世界最大のLPガス輸出国である米国において、プロパン在庫の取り崩しが進み、市況が上昇したことが背景にある。米国ではLPガスの一大輸出地域であるメキシコ湾で濃霧が観測されており、輸出作業への影響も警戒されたという。サウジCP2月ブタンも、前月比10ドル値上がりして640ドルとなった。

(2024年2月1日配信)

1月26日GENIX-CN70は前週比0.64ポイント値上がりして169.36ポイントとなった。7週間連続の上昇で、3週続けて統計開始来の最高値を更新した。一方、東証株式市場全体としては、このところの上げピッチの速さから利食いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は7週ぶりに値下がりした。

GENIX-CN70の構成銘柄で値上がりが目立ったのは、25日に2023年12月期決算を発表したHIOKI。24年12月期も増収増益を見込み、配当金を年200円に連続増配する方針が好感されたようだ。

このほか、三菱重工業、三菱化工機が高値圏で頑強な値動き。SMBC日興証券が目標株価を引き上げたウエストホールディングスも下値を切り上げている。

(2024年1月26日配信)

 欧州パイプラインガス先物価格が17日、百万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル台まで下落し、昨年8月以来の安値水準となった。北東アジアLNGスポット価格も続落しており、17日は昨年6月以来の9ドル台を付けている。先物の決済期日が2月から3月に移り冬場の需要期を過ぎることで、足取りが弱くなっている。昨年の安値は欧州ガス先物価格が7ドル台、スポットLNGは8ドル台だった。

 当面の市況動向についてエネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は、「カタールから欧州にLNGが年間1500万トン供給されており、スエズ運河の通航リスクが警戒されているものの、それでも欧州の在庫水準が依然として高いため、中東からの輸送に支障が生じても当面の供給は何とかなると見られている。昨年10月から輸出を再開したエジプトLNGもまだ量は少ないとはいえ心理的な支えになっている。不需要期の相場は数年前なら3~4ドルもありえたが、安価になったスポットLNGを中国が仕込む動きも見られるため、今回はそこまで下がらないだろう」とする。また、「足元のスポット需要は弱いが、供給力に余裕があるほどの状況でもない。幸いにして供給設備のトラブルは昨年から起きていないが、いつ起きても不思議はない。先行きを楽観視するわけにはいかない」と指摘する。

(2024年1月18日配信)

東京株式市場は年末・年始と値上がり基調を強めており、GENIX-CN70も12月15日から1月12日終値まで5週連続で上昇した。1月12日の終値は167.67ポイントとなり、昨年9月15日にマークした指数算出以来の最高値165.83ポイントを4カ月ぶりに更新した。

GENIX-CN70構成銘柄では、商社株の値上がりが目立ち、伊藤忠商事、住友商事が最高値を更新。海運株も高値圏でしっかり。個別銘柄では、三菱重工業、愛知時計電機が最高値を付けた。本日午前、2024年8月期第1四半期決算を発表し、大幅な増収増益が確認されたウエストホールディングスが急伸した。

(2024年1月12日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)1月分は、プロパンが前月比10㌦高い1トン620㌦。ブタンも同じく10㌦値上がりして630㌦となった。小幅高ながら、極東マーケットは足元で強弱感が交錯しており、先行きの方向感は乏しい状況。米国のプロパンスポット市況(モントベルビュー)は12月分が1トン357㌦と、前月から約25㌦値上がりした。依然として近年の安値圏での値動きではあるが、市中の在庫水準は過去5年平均並みまで減少しており、底堅さも見られる。

(2024年1月10日配信)

1月5日 2024年の年明けの東京株式市場は、能登半島地震を受けて4日の大発会は売り物先行でスタートしたが、新NISA開始に伴う投資資金流入などによる先高期待から押し目買いが優勢となり、結局、東証株価指数(TOPIX)は4日、5日と続伸した。

GENIX-CN70も12月最終週に続いて上昇し、5日終値は164ポイントと、5週ぶりに160ポイント台を回復。昨年9月15日にマークした最高値165.83に急接近した。指数構成銘柄では、大阪ガスが大幅高となり、5日に一時3111円まで上昇。12月13日に付けた最高値3077円を上回った。4日以降終値ベースでも初めてとなる3000円台を維持している。このほかでは、海運株が人気を集めており、日本郵船、商船三井が最高値を更新した。

(2024年1月5日配信)

12月29日 東京証券取引所最終売買日(大納会)は、今年1年の相場を象徴するような堅調な展開だった。その中でGENIX-CN70は前週に続いて上昇し、3週連続高で今年を締めくくった。GENIX-CN70の年間騰落率はプラス25%となり、東証株価指数の上昇率と互角の好成績だった。

GENIX-CN70構成銘柄の中で値上がりが目立ったのは、川崎汽船、日本酸素、栗本鉄工、愛知時計電機、関電工など。一方、不調だったのは、イーレックス、レノバ、テスHD、ウエストHDなどだった。なお12月末割り当てで、京セラが1株を4株、三菱商事は1株を3株に株式分割した。GENIX-CN70もこれに合わせて、株式分割の影響を考慮した修正株価指数を算出している。

(2023年12月29日配信)

12月22日 GENIX-CN70は前週に続いて上伸した。全般は高安まちまちだが、値がさ株の海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)がそろって本年高値を更新し、CN70を押し上げた。また、工場新設で恩恵を受ける理研計器が12月20日上場来高値を更新した。

海運株が動意付いたのは先週末。紅海で武装組織による商業船への攻撃が相次いだことで、海運会社がスエズ運河の航行を見合わせ、迂回経路による輸送距離の延長などで海運市況が上昇するとの思惑が働いた格好。海運株はコロナ禍前後の市況高騰局面で株価が5倍以上に跳ね上がっており、その記憶がまだ新しいだけに思惑が先行しやすいようだ。

(2023年12月22日配信)

12月15日 GENIX-CN70は3週ぶりに反発した。指数構成銘柄では、理研計器の株価が13日に上場来高値を更新。大阪ガスも同日最高値を更新し、未踏の3000円台に一時到達した。

岩谷産業の株価はコスモエネルギーホールディングスの筆頭株主になると発表した12月1日以降、大きく値下がりしたが、15日終値は7日ぶりにプラスに転じた。

14日に一時5996円まで下げ、4月初旬以来8カ月ぶりとなる6000円大台割れを見たことで、値ごろ妙味が台頭したようだ。9月高値からこの安値までの下落率は26%に達し、一株当たり純資産5249円も意識される水準となっていた。チャート面から当面の戻りめどを探ると、25日移動平均線の6866円、9月高値から直近安値までの下げ幅の半値戻し6770円など、6800円あたりが意識されそうだ。

(2023年12月15日配信)

12月13日 GENIX-CN70構成銘柄の大阪ガスが4日続伸し、一時3077円の高値を付けた。3000円台に乗せたのは上場来初。12日大引け後に、日本経済新聞が「伊藤忠と大阪ガス、世界最大級の水素生産に最大4割出資」と報じ、これを材料視する買い注文が朝方から集まった。

株価は11月初旬、自社株買いの発表を契機に大きく上放たれ、過去16年来の上値抵抗線となっていた2600円前後の節を突き抜けてきた直後とあって、しこり感のないチャート妙味も好感されているようだ。

12日に発表された欧州の水素企業Everfuelのニュースリリース

(2023年12月13日配信)

12月8日 GENIX-CN70は前週に続いて下落した。急速な円高進行や世界的な景気減速懸念を受けて、東京株式市場はこの日、ほぼ全面安となった。GENIX-CN70構成銘柄にも利益確定の売りが先行した。中でも、原油先物市況の下落を受けて、石油、造船、商社、海運株などが大きく値を下げた。

12月1日引け後にコスモエネルギーホールディングス株式大量取得を発表した岩谷産業は、週明け4日から株価が大きく下げ、発表前の終値7141円から8日安値6388円まで5日間で10%を超える下げとなった。9月の本年高値8040円からの下落率は20%に達している。アナリストからは「コスモエネ株取得に1千億円を超える大金を投じることについて、どのようなリターンを見込んでいるのか、できる限り定量的な説明が欲しい。株価の下げは合理的な反応。投資家は追加情報を待っている」との声が聞かれる。コスモエネ株が取得価格を割り込んでいることも嫌気されているようだ。

(2023年12月8日配信)

米原油先物価格(WTI)は12月6日、前日比2.94ドル安の69.38ドルと5日連続で値下がりした。節目と見られた1バレル70ドル台を5カ月ぶりに割り込んだ。9月に付けた本年高値93.68ドルからの下落率は26%に拡大するなど下値を模索する動きとなっている。

注目された11月30日のOPECプラス会合は、各国から自主減産(来年1~3月期に日量約220万バレル)が発表されたものの、想定の範囲内と受け止められたようで、相場の下落基調を反転させるには至らなかった。

相場が弱含んでいるのは、世界的な景況悪化に伴う需要減少への警戒があると見られる。「不動産不況が続く中国経済の停滞や、ここまでの利上げで減速が見込まれる米国景気などを考慮すると石油需要は伸び悩み、自主減産してもなお需給は引き締まらないのではないか」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部芥田知至シニアアナリスト)との指摘がある。当面は今週末発表される米雇用統計をはじめ、主要な経済指標を横目にみながら神経質な値動きが続きそうだ。

(2023年12月7日配信)

12月1日 岩谷産業(GENIX‐CN70構成銘柄)はこの日、コスモエネルギーホールディングスの株式を追加取得すると発表した。旧村上ファンド系と見られる既存株主から計約1740万株を1053億円で取得する。取得済みの持ち株と合わせた保有比率は19.93%となり、同社の筆頭株主になる。

1株当たりの取得価格は約6051円で、この日の東証終値5616円を約8%上回るが、価格の算定根拠については明らかにしていない。今後については、「より一層連携を深め、新たなシナジーを創出する」としているが、具体的な方向性はまだ示されていない。また、今3月期連結業績への影響については「精査中」としている。

サウジCP12月分は、前月と同価格の1バレル610ドル、ブタンも変わらずの620ドルとなった。

(2023年12月1日配信)

11月24日 東京証券取引所で三菱重工業(GENIX‐CN70構成銘柄)の株価が前日比529円高と大幅続伸し、およそ2カ月ぶりに8800円台まで水準を切り上げた。

同社は11月22日に防衛事業説明会を開催し、来年度からの3カ年は防衛力整備計画の大幅な拡充を受けて同社の事業規模は2倍以上になると発表した。過去長期にわたり同事業規模は5,000億円弱で推移していたが、来年度からの3カ年は1兆円規模になるとした。祝日をはさんでこの日は朝方から買いが先行、業績拡大への期待感を織り込む動きを見せた。株価が1万円に近づいていることから、株式分割を催促する値動きにも映る。

ガスエネルギー新聞が注目する同社のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みも続いている。弊紙11月20日付では三菱重工エンジン&ターボチャージャの「水素混焼50%で安定燃焼、5700キロワット級ガスエンジン」を技術面トップで紹介している。また、同日付紙面には「水素特集」を掲載しており、三菱重工の高砂水素パークなどを詳しく紹介している。

(2023年11月24日配信)

11月14日の東京証券取引所で大阪ガスが4日続伸し、ザラ場の高値は2920.5円まで買い進まれた。11月7日にマークした上場来高値2914.5円を5営業日ぶりに更新した。10月27日発表の中間決算が好感されているほか、同日発表の自社株買いも歓迎されているようだ。マーケットでは、大阪ガスの株価格付けを従来から「買い」としていたみずほ証券が、目標株価を2600円から3300円に引き上げたとの情報もこの日伝わった。

大阪ガスの株価をローソク足(日足)で見ると、11月9日から10日にかけて、さらに10日から13日、13日から14日にかけても連続して窓「空」ができた。4本の陽線と「三空」で形成される高値圏でのこの形は「三空踏み上げ」と呼ばれ、チャートを投資判断のよりどころとする投資家は、空売りを仕掛ける急所とみる。同社株の信用買い残は、売り残が買い残を超過した状態にある。確かに目先は急伸した後だけに強弱感が対立しやすい場面と言えるが、この日の株価は株価純資産倍率が0.7倍台と依然として割安な状態にあることから、むしろ売り方の手仕舞い(買い戻し)による一段の上昇を読む向きもある。

関連記事 大阪ガスが上昇率首位、愛知時計は最高値を更新/GENIX―CN70 - ガスエネルギー新聞 (gas-enenews.co.jp)

(2023年11月14日配信)

 11月2日のGENIX‐CN70は3週ぶりに反発した。自社株買いを発表した大阪ガスが急伸し、最高値を更新したほか、業績好調の日本酸素、愛知時計も高値を更新した。

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の11月分は、プロパンが1トン当たり前月比10㌦値上がりして610㌦(前月比1.67%高)となった。ブタンは同5㌦値上がりして620㌦(同0.81%高)。プロパン、ブタンともに4カ月連続で値上がりした。

 LPG市況に影響を与える原油相場の値動きはこのところ重くなっているが、LPG市況はこれから需要期を迎える季節性もあって、先高観が根強いようだ。日本向け米国産LPGの航路に当たる中南米パナマ運河が、渇水の影響で渋滞解消に時間がかかるとの見通しも強気の見方を支えているようだ。

 CPのこの1年間の価格推移を振り返ると、プロパンは2月に790㌦のピークを迎え、その後は大きく値下がりして、7月に400㌦のボトムを付けている。ブタンも同様に2月の790㌦でピークを打ち、7月には375㌦の安値を付けている。

(2023年11月2日配信)

10月27日 GENIX-CN70は前週末終値から0.2ポイント下落して155.81と2週連続で下落した。東証株価も0.06ポイント下がって142.76となった。

10月以降、株式市場は調整色を強めており、9月最終週との比較ではGENIX-CN70、東証株価ともに約3%下落している。

GENIX-CN70の構成銘柄のうち9月末比で上昇したのは全体の2割16銘柄にとどまる。その中で愛知時計が本年高値を更新したほか、日本酸素、栗本鉄工、川崎汽船などが高値圏で頑強な値動きを見せている。

(2023年10月27日配信)

10月19日の米原油先物(WTI)価格は3日続伸。中東地域の紛争拡大への懸念が市況を押し上げた。

国際ガス市況も値上がりしており、欧州パイプラインガス先物価格(TTF)は13日に百万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル台、スポットLNG価格は18日に19ドル台へと上昇している。

イスラエル沖の海洋ガス田(タマル)が操業を停止したと報じられており、このガスを原料とするエジプト産LNGの出荷に影響が及ぶ恐れが指摘されている。

(2023年10月20日配信)

 10月9日の米原油先物(WTI)市況は2日続伸し、1バレル前日比3.59㌦高の86.38㌦に上昇した。6日の米雇用統計は市場の予想を上回る数値で、長期金利上昇を促したが、原油市場は底固い動きを見せた。そこに、イスラエル・パレスチナ間で大規模な武力衝突が発生。中東の地政学的リスクが高まったことで、買い気が優勢となったようだ。また、本年高値を付けた9月27日以降の下げが急だったこともあり、買い戻しも入りやすかったと見られる。

 一方、連休明け10月10日の東京株式市場は、朝方から買い戻しの動きが広がりほぼ全面高でスタート。GENIX‐CN70構成銘柄もこのところ下げがきつかった石油株などが買い気配で始まるなど総じてしっかりした動き。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員は当面の原油相場について、「今回の武力衝突にイランの関与があるのかどうかなど中東情勢には不透明な部分があり、不安定要素が増えた格好だ。他方、このところの米長期金利上昇やドル高が原油相場を下押しするとの見方や、米欧の金融引き締め効果で石油需要が鈍化するとの懸念も根強い。さらに中国の不動産不況、全米自動車労組(UAW)のストライキ、米予算審議の難航なども需要を鈍化させる要因として意識されている。当面は地政学的リスクや需給などの強弱材料が交錯する中で、不安定な推移が見込まれる」としている。(了)

(2023年10月9日配信)

米原油先物が10月4、5日と続落し、1バレル82㌦台まで下落、8月30日以来の安値水準となった。4日は下落率が5・61%に達する大幅な下げで、下落率が5%を超えるのは5月2日以来5カ月ぶり。9月27日に付けた本年高値93・68㌦から5日までの下落率は12%強に広がった。市場では、米ガソリン在庫の急増や強含んでいる長期金利の動向を警戒。今晩の米雇用統計の発表を注視している。

一方、米天然ガス先物(HH)価格は3日続伸し、今年3月以来となる百万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル台に乗せてきた。

(2023年10月6日配信)

米原油先物が10月4日、前日比5.01㌦安の1バレル84.22㌦と急反落し、8月31日以来の安値水準に後退した。1日の下落率の大きさは5.61%に達した。5%を超える大幅な下げは5月2日の5.29%以来、5カ月ぶり。市場では、同日発表された米石油在庫統計でガソリン在庫の急増が明らかになり、これが利益確定売りを誘ったとの見方が出ている。

JOGMECの首席エコノミスト・野神隆之氏は、「統計で明らかになった米ガソリン需要の低迷は、この時期としては2000年以来の低水準。他にもロシアの軽油輸出禁止の一部解除検討の報道、サプライズのないOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会の内容などの弱気材料がそろって現れた。このため、市場は狼狽売りの様相を呈しているが、今年第4四半期に供給不足に陥るとの認識に変化はなく、市場のセンチメントが根本的に変化したとは言い切れない。原油市況は売られ過ぎ気味の領域に入りつつあり、値頃感から買い戻しが発生しやすい状況ではあるが、まずは明日6日発表予定の米国雇用統計が注目される」としている。

10月5日の東証は朝方、昨日までの大幅安に対する自律反発の動きとなり、TOPIXが6日ぶりに反発するなど全般に買い物優勢の始まりとなったが、原油の急落を受けて、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEXや石油資源開発など石油関連株は売り気配のスタートとなった。

(2023年10月5日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の10月分は、プロパンがトン当たり前月比55㌦値上がりして600㌦(前月比9.09%高)、ブタンは同50㌦値上がりして 615㌦(同9.82%高)となった。プロパン、ブタンともに3カ月連続で値上がりした。背景には原油市況の上昇が指摘されている。

(2023年9月29日配信)

東証9月28日前場の寄り付きは、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮など石油株が大幅高でスタートした。朝方は全般に利益確定売りが先行する中で、石油関連株の値動きの強さが目立った。石油資源開発は2008年以来、13年振りとなる6000円台に到達した。

 前夜27日の米原油先物(WTI)価格は前日比3.29㌦値上がりして1バレル93.68㌦となり、7営業振りに今年の高値を更新した。また、当面の戻りのめどと見られていた昨年10、11月に付けた92㌦台の高値を一気に上抜いてきたことで、市場関係者の間では先高ムードが一層強まっている。

(2023年9月28日配信)

9月22日の東証株価は前夜の米国株式下落を受けて、朝方から売り先行で始まった。GENIX-CN70構成銘柄も商社、海運株など総じて下落した。半面、INPEX、石油資源開発、ENEOSなど石油株の一角は底固い動き。GENIX-CN70は前週末比2.08ポイント下落して164.04ポイントと5週ぶりに下落した。

21日の米原油先物市場は、米金融政策の引き締め長期化懸念が台頭し、利益確定売りに押された。期近終値は前日比0.65㌦安い89.63㌦と、3日続落し、6営業日ぶりに1バレル90㌦台を割り込んだ。

9月25日付紙面の関連記事「原油100ドルが視界に サウジ減産の影響を注視」

(2023年9月22日配信)

9月14日の米商品先物市場では、原油先物(WTI)価格が2日ぶりに反発し、終値は前日比1.64㌦値上がりして1バレル90.16㌦と、当面の節目と見られていた90㌦大台を突破した。90㌦に乗せるのは2022年11月7日の91.79㌦以来、10カ月ぶり。市場関係者の間では、原油需給の引き締まり感から先高を予想する声が強まっている。

原油市況の上昇を受けて、15日の東証ではGENIX-CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事といった、石油やエンジニアリング、商社など資源関連株が一斉に買い進まれた。INPEXは2008年以来、この週急伸した日揮は2018年以来の高値水準。

(2023年9月15日配信)

9月13日の東京証券取引所では、朝方からINPEX、石油資源開発、ENEOSなどGENIX-CN70構成銘柄の石油株が買い先行でスタートし、本年高値を更新した。前夜12日の米原油先物価格(期近終値)が前日比1.55㌦高の1バレル88.84㌦と反発し、約1週間ぶりに本年高値を更新したことが買いの手掛かりになっていると見られる。

原油市場では需給に引き締まり感が指摘されるなど、市況は当面強含むとの見方に傾斜しているようだ。ENEOSのこの日の株価は4年8か月ぶりとなる600円台を目前に捉えている。INPEXは2008年10月以来、石油資源開発は2009年6月以来の高値水準に来ている。

米原油先物は2008年に145㌦の最高値を付け、2011年から2014年にかけて100㌦前後で推移していた。最近の石油株は原油100㌦時代の再来をあたかも織り込むかのような値動きを見せている。

(2023年9月13日配信)

9月8日の東京株式市場は、前夜の米国株式市場の下落を受けて、朝方から利益確定売りが先行する展開となったが、この週のGENIX-CN70は前週末比1.67ポイント上昇して161.86と3週連続値上がりし、前週に続いて指数算出以来の高値を更新した。この週は三菱重工、川重重工、三井物産、石油資源開発などが指数をけん引した。

原油先物価格(米WTI)は9月7日、前日比0.67㌦安い1バレル86.87㌦と、10日ぶりに値下がりし、前日まで値上がりが目に付いたINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事などの資源関連株には利食い売りが広がった。

また、個別では、このところ物色人気を集めていた三菱重工も6日ぶりに反落した。半面、三菱重工の急上昇に対して出遅れ感が台頭していた川崎重工はこの日も買いが途切れず逆行高、10連騰となった。

三菱重工の本紙最新ニュース:長崎で脱炭素基盤技術 既存拠点連携し開発推進/三菱重工

川崎重工の本紙最新ユース:世界初ドライ式水素タービン、NOx抑制と高効率を両立/川崎重工
(2023年9月8日配信)

市況情報

【LNG特集2023】2026年までひっ迫続く 欧州の在庫払底懸念は後退/JOGMEC白川裕氏

【LNG特集2023】2026年までひっ迫続く 欧州の在庫払底懸念は後退/JOGMEC白川裕氏

国際ガス市況は2020年以降、極端な乱高下を繰り返している。昨年夏は欧州のガスパイプライン価格(TTF)が3カ月で約4倍に跳ね上がり、百万BTU(英国熱量単位)当たり100ドルに肉薄した。今春の反落場面では7ドル台の安値を付け、最近は中東情勢の緊迫化を受けて16ドル前後に上昇している。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は26年までは需給がひっ迫し、急騰しやすい状態が続くと見る。供給を安定させ、価格を適正化させるには新規プロジェクトを滞りなく立ち上げる必要があるが、買い主の長期的な支えが欠かせないと指摘する。

ロシア・ウクライナ戦争を境に、欧州はLNG市場で存在感を高めている。戦前の欧州のLNG輸入量は年約7500万㌧程度だったが、ロシアからのパイプラインガス輸入をLNGの調達に切り替えた昨年は前年比1・6倍の約1・2億㌧に急増、世界のLNG貿易約3・9億㌧の3割に及んだ。注視すべきはこの追加需要の大部分がスポット調達によるもので、世界のスポット取引の半分近くを欧州が買い占めたことになる。このため価格が上昇し、新興国が買い負けている。問題はこの構図がしばらく続くという点だ。

LNG市場は26年にかけて綱渡りが続く。小さな供給トラブルでもスポット価格は上昇しやすい。ただ、救いは欧州のガス需要が減少していることだ。今年はピーク比約2割減の3・2億㌧程度になりそうで、このため欧州の地下ガス貯蔵量は過去最高水準に積み上がっている。この冬が厳冬でなければ在庫の根雪部分が厚くなり、当面ガス不足に陥る事態は回避できそうだ。消費が減少しているのはガス価格の高騰が響いているためで、需要はしばらく弱含みで推移しそうだ。

欧州のLNG輸入の先行きを占ううえで、来年秋の米国大統領選挙の行方も注目される。ウクライナへの支援中止を標榜する共和党が勝てば、戦争を収束させる力学が働き、ロシアから欧州へのパイプラインガス供給が一部復活する可能性がある。いざという時にもLNGでカバーできる年3000万㌧程度まで復活すれば、引き締まり感は後退しよう。

●海峡封鎖は影響大

目下のリスクは中東情勢の緊迫化だ。イスラエルとハマス過激派が戦闘状態に入り、イスラエル沖合のタマルガスプロジェクトが生産停止を一時余儀なくされた。このガスの一部がエジプトに供給され、LNGの原料に使用されていたことへの影響が懸念されたが、エジプト自身が既にガス不足に陥り、生産停止に至る以前からLNGの輸出を停止していたという点で、本件は中東リスクというより同国固有の問題とみなせる。

むしろ留意すべきは紛争地域が拡大するリスクだ。1967年に勃発した第3次中東戦争勃発では、1975年までスエズ運河が閉鎖され原油輸送が途絶えた。LNGの大動脈であるホルムズ海峡に機雷が敷設される事態にでもなれば影響は深刻だ。この海峡を通るカタール、UAE(アラブ首長国連邦)のLNGは世界貿易の約4分の1を占める。ロシアから欧州へのガス供給は半年かけて段階的に減少したが、急停止となればショックはより大きい。

●28年以降、供給過多に

米国、カタール等で新規プロジェクトが立ち上がる27年以降、市場の引き締まり感は徐々に薄らいでいく。28年になると欧州の追加需要に新規供給量が追い付き、過去最大級の供給過多に転じていく。スポット価格は下落し、価格競争力に劣る米国産LNGにはキャンセルが発生しよう。

ロシア・ウクライナ戦争以前、世界各国はスポットLNGの調達を増やし、その割合は22年の世界平均で35%に達していた。同戦争を境にスポット調達を増やした欧州は割合が47%に達した。

エネルギー安全保障が重視される現在は長期契約が見直されており、スポットの割合は目先低下する可能性があるが、28年以降はスポット価格が大きく下がり、割合は再び高まると予想される。これまでの延長線上で行けば、31年には50%に達する。

スポットと長期契約による調達コストを比較するため、10~22年の13年間を検証した。平時と位置付けられる10~20年の期間は、長期契約価格が平均10ドル、スポットは9・7ドルと差はほとんどなかった。両者は短期間で比較すると顕著な違いを見せるが、長期間でならすと水準が一致してくる。長期契約の価格はスポット価格を後追いで反映するため値差が収れんすると見られる。

一方、21~22年の緊急時では、長期契約が10ドル、スポットは26・2ドルと差が開く。スポット調達のリスクはボラティリティ(価格変動率)の大きさにあり、今回の検証でスポットのボラティリティは平時なら長期契約の2倍程度だが、緊急時には約8倍に達することがわかった。安定した価格で確実に入手できる長期契約の利点が今改めて見直されるゆえんだ。

●欧州への提言

ウクライナ戦争以降のLNGスポット価格の高騰は、ロシアにガスを依存し過ぎていた欧州のエネルギー政策の失策が招いたとの指摘がある。欧州は当面スポット市場から毎年約5000万㌧を吸い上げる見込み。これにより価格は高止まりし、世界は26年までに累計2700億ドルもの損害を被る見通しだ。

LNG市場を安定化させていくには、新規プロジェクトをコンスタントに立ち上げていく必要がある。それには長期契約が欠かせない。

長期契約の期間は従来、20年間は必要とされてきた。だが、カーボンニュートラルへの移行を視野に入れなければならない今、買い主は期間短縮を求めている。国際エネルギー機関(IEA)は、10年契約に短縮した場合の契約価格は20年契約の1・2倍に上がると試算する。欧州の買い主がこれを受け入れると追加需要分の支払い総額は1400億ドルに及ぶ。もっともこの額は前述した世界が被る損害額の半分程度。欧州は契約価格が1・2倍になっても長期契約を結び、プロジェクトの立ち上げに貢献してほしい。さらに長期契約の最低目標設定や、地下ガス貯蔵在庫の下限目標追加といった安定化対策にも期待したい。

【中東緊迫受け市況上昇、中国がアジアの成長をけん引】

LNG市場動向について、スポット価格の査定を専門とするプラッツ(S&Pグローバルコモディティインサイツ)のシニアエディター・アジア太平洋LNG担当の河崎厚子氏とグローバルLNG定量分析主任研究員のロス・ウェイノ氏に聞いた。

◇◇◇

――2023年のLNGマーケットの動きで目に付いた点は。

河崎北東アジア向けLNGスポット価格(JKM)は、今年1月3日に付けた百万BTU(英国熱量単位)当たり23・901ドルが最高値となり、6月にかけて下落が続き、同月7日の8・399ドルが今年の最安値となった。

価格下落の背景にはLNG市中在庫の高止まりがあった。北東アジアの電力・ガス会社などの最終需要家は、ロシアとウクライナの戦争によって引き起こされる潜在的な不確実性に備えるため、2022~23年の冬シーズンが到来する前に在庫を十分に高く積み上げていた。結局、この冬は暖冬になり、ガス消費は振るわず、一方で戦争に関わる供給側の混乱も生じなかったため、市中在庫は夏まで高止まりが続き、スポットLNGのニーズは低調に推移した。

もっとも6月に安値を付けた後は、徐々に下値を切り上げてきている。8月には西豪州のLNGプロジェクトでストライキがあり、10月にはイスラエルで中東紛争がぼっ発した。これらによる供給面への影響が懸念され、10月中旬に19ドル台まで上昇、最近は17ドル台で推移している。前年同期と比較すると3割ほど安いが、それでも歴史的に見れば高水準だ。

豪州のストはその後、労使交渉がまとまり、供給減少への懸念は解消した。だが、中東情勢は依然として予断を許さない。イスラエル産ガスを原料とするエジプトからのLNG出荷が止まっているが、紛争地域が拡大すれば影響はより大きくなるだけに、動向が注視される。

当社の価格評価システム(プラッツLNGマーケット・オン・クローズ)によると、アジア向けのスポット取引はこうした状況を映して、今年半ば以降活発化している。取引件数と取引数量は第3四半期(7~9月)に記録的な高水準に回復した。

――LNG需要動向の地域別の特徴は。

河崎アジアでは、香港、フィリピン、ベトナムが今年からLNGの輸入を開始した。

中国の今年のLNG輸入量は、コロナ感染防止ため厳しい行動規制で経済活動が委縮した昨年からは一転して回復傾向にある。

一方、日本の輸入量は在庫高と価格高騰の影響で昨年を下回っている。韓国の需要も、高水準の在庫と原子力発電所の出力増加によって低調だ。台湾も、価格高騰の影響や、景気低迷に伴う電力需要の伸び悩みにより、昨年を下回っている。

半面、インドの今年1~10月のLNG輸入量は昨年を上回っている。同国のLNG需要は価格に敏感に反応する。今年のLNG価格は歴史的に見れば割高な水準ではあるが、昨年よりはかなり下がっている。

一方、欧州諸国はパイプラインによるロシアからの天然ガス輸入を取り止め、LNGによる調達に切り替えている。地理的に近い米国からの輸入を増やしており、今年は米国産カーゴの約70%を欧州諸国が輸入している。

――供給国としての米国の存在感が際立っている。

河崎昨年6月に火災を起こして操業を停止したフリーポートLNGは、今年第1四半期(1~3月)にLNGカーゴの出荷を再開した。米国産LNGの出荷は、今年ここまでのところ昨年よりも増加している。

新規のLNGプロジェクトの操業開始は、今年は予定されていないが、来年後半にはプラクミン・パスLNGを皮切りに、「第3の波」と呼ばれる輸出プロジェクトの操業が相次ぐ見通しだ。

――来年のLNGマーケットをどのように展望しているか。

ウェイノスポット価格の水準がどうなるかについては申し上げられないが、来年の世界LNG貿易量としては、今年の推定値に対して約1%(80億立方㍍)増加し約5660億立方㍍になると予想している。今年の貿易量は約2%増加する見通しで、成長率はやや鈍化するだろう。

地域別には、アジア太平洋地域の需要が最も強く、同地域の輸入量は本年推定値比で約220億立方㍍増加(約6%増)する見通し。中でも中国の輸入量が約9%増と大きく伸び、アジア地域の伸びを牽引する。

米国からの供給が増加する一方で、アジア域内の生産は減少する。マレーシアと豪州からの輸出減が最も大きいと予想される。

【「三つの多様化」を推進/東京ガス竹内敦則原料部長に聞く】

2020年代に入り世界のLNG市場は激変した。ロシア・ウクライナ戦争がボラティリティ拡大に拍車をかけ、石油危機ならぬ「天然ガス危機」が初めて起きた。東京ガスの竹内敦則執行役員原料部長にこの間のLNG調達戦略を聞いた。竹内部長は同社が進める「三つの多様化」について説明。「トレーディングなしにはやっていけない時代に突入した」と指摘した。また、都市ガスの信頼性を維持するためにも、メタン漏えい対策を売主に働きかけていくことが大切だと述べた。(聞き手・片山浩樹)

●需給は26年度から緩和、トレーディングは不可避に

――この数年でLNG市場は様変わりした。

エネルギー市況の変調が始まったのは、ロシアによるウクライナ侵攻の1年以上前だ。まず2020年に新型コロナ禍で世界のガス・石油需要が急減し、4月にはJKM(北東アジア向けLNGスポット価格指標)が2ドル割れを記録。それが年末には、北東アジアの寒波や供給側のトラブルなどで、春先の底値から16倍以上となる32ドル超まで急騰する異常事態となった。

21年春には北東アジアの気温が高めに推移して大きく値下がりしたが、6月ごろからは地下貯蔵在庫が記録的な低水準となった欧州のTTF(欧州パイプラインガスのスポット価格指標)にさや寄せする形で再び大きく上昇し始めた。欧州の再生可能エネルギー電源の稼働減、ロシアから欧州へのガスパイプライン輸送量の減少も加わり、スポット価格が高騰。22年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まるとさらに拍車がかり、一時TTFは99ドルまで高騰した。昨年までのLNG市場は、まさにジェットコースターのような激しいボラティリティだった。

今年度に入ってマーケットは少し落ち着きを取り戻し、現在は10ドル台後半で推移している。要因の一つは、このボラティリティに対処すべく各国が地下貯蔵などの在庫を増やしにかかったことだ。1~4月が暖冬気味だったことも幸いした。もう一つは世界経済の弱さだ。中国は不動産不況に見舞われ、欧州もロシアからのパイプラインガスが減少したことでエネルギー価格が高騰し経済が低迷。特にロシア産のガスと中国への輸出に依存していたドイツは「欧州の病人」と言われるほどの苦境となっている。

――今後の見通しは。

ロシアから欧州へのパイプラインガスの途絶で、世界中のLNGが欧州に引き寄せられる状況は当面続く。そのため、ここ2~3年は少しタイトな市場になるとも見込まれているが、26~27年度からはカタール・北米などで新規プロジェクトが次々に立ち上がるので、需給は緩和の方向に向かうという見方が多い。

一方で、ガス価格が政治的な要因で動くようになってきていることにも注意しなければならない。例えば先日、豪州のLNG施設におけるストライキのニュースが伝わった際には、豪産LNGの主な輸出先である北東アジア向けのJKM以上に、欧州のTTFが跳ね上がった。イスラエルとハマスの衝突でもスポット価格は上昇したが、イスラエルからエジプト経由で欧州に供給されているLNGがあるとはいえ、その量は少なく、世界のガス需給に与える影響は限定的なはずだ。

――こうした環境変化に対応した東京ガスのLNG調達戦略は。

もともと東京ガスは、調達先の多様化、契約条件の多様化、商流の多様化という「三つの多様化」を進めてきた。これが当社のLNG調達戦略であり、ロシアによるウクライナ侵攻の前後で全く変わっていない。

調達先の多様化は、特定の国や産地、売主に偏らないようにリスク分散を図ることだ。これはかなり進んできてはいるが、より適切な分散化を引き続き模索している。

契約条件というのは、長期契約の価格フォーミュラや受け渡し条件などを指す。代表的な価格フォーミュラは原油価格リンクだが、ヘンリーハブ(米国のガス価格指標)リンクや、長契・スポット比率の最適化も追求している。

受け渡し条件には、FOB(本船渡し=買い手が手配したLNG船に積み込んだ時点で引き渡し)やDES(仕向け港着船渡し=指定された輸入港での引き渡し)などがある。持ち届け契約であるDESの方が、売主側がさまざまな安定供給のための対応を担う面では楽だが、フォースマジュール(不可抗力)を宣言されてしまうと打ち手がないという側面もある。自分で取りに行くFOBなら、買い手がLNG船をある程度コントロールできるので、ほかの所へ探しに行くこともできる。

東京ガスは、FOBとDESの長期契約をコミットしている。もう少しFOBを増やしたいが、DESにもメリットがあるので、バランスが大事になる。仕向け地条項の撤廃も契約条件の多様化の取り組みの一つだ。もっと細かい話では、年間引き取り数量の柔軟性(契約数量に対して、買い手が一定の幅で引き取り数量を増減できる条項)も多様化の対象になる。

――商流の多様化とは。

調達先を多様化していくと世界中のLNGプロジェクトにコミットすることになるが、それを全て日本の首都圏に持ってくるのが最適とは限らない。例えば、当社が米国東海岸で調達したLNGを欧州に需要を持つプレーヤーに渡し、彼らがアジアで調達したLNGを東京湾に持ってくれば「地域間スワップ」が成立する。お互いに航海日数が減るので、フレート(船賃)が節約できる。アジアのスポット玉が安ければ、自社で買ってきてもいい。

「季節間スワップ」というトレーディングもある。例えば12月受け渡しのスポット玉が安く、2月がとても高いとする。12月に買っておいて2月に売れば、配船調整等でさまざまな調整が必要となるが月間の値差が利益になる。

今まではLNGの産地から東京へ持ってくるだけだったが、こうしたスワップを組み合わせることで商流を多様化できる。経済的なメリットのみならず、LNG市場の流動性向上を通じて、世界的な市場の安定化にも寄与する。売主やトレーダーのネットワークに果敢に入ることで、いろいろな情報も得られ、セキュリティにも貢献する。逆に言うと、こうしたトレーディングの取り組みなしには、やっていけない時代に突入したとも言えるだろう。

――脱炭素の流れもある中で、上流投資に対する東京ガスのスタンスは。

基本は「ポートフォリオ経営」だ。さまざまな再生可能エネルギーやe―メタンといった脱炭素にも取り組んでいくが、LNG分野への投資も引き続き重要だ。

ただ、上流から中流にかけての投資についても、地域だけでなく、ガス田か、液化設備か、LNG船か、といった対象も含めて、多様な選択肢を追求していく必要がある。例えば19年に就航した自社LNG船「エネルギーイノベーター」は自立角形タンク(SPB)方式によって高い推進性能と低燃費を実現し、パナマ運河の通峡も可能な船型で、米産LNGの輸送にも活用されるなど、調達の多様化に寄与している。21年には日立LNG基地2号タンクも完成した。こうしたLNG基地や船、契約など多様なアセットを有効活用して最適運用と安定供給に取り組んでいく。

今後はe―メタンとの親和性という視点も出てくると思う。あるLNG液化プロジェクトへの投資を検討する際に「ここは将来的にe―メタンの輸出拠点となる可能性もある」となれば、それが一つの牽引車になるかもしれない。

●メタン漏えい対策は大切

――国際的にLNGサプライチェーンからのメタン漏えいが課題になっている。LNG産消会議では、JERAと韓国ガス公社、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が「CLEAN」というイニシアチブを発表した。東京ガスのスタンスは。

メタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍以上に上る。低・脱炭素社会を目指す上でメタン漏えいは極力避けなければならない。売主に対しても、情報提供や、低減策をしっかりとるよう継続的に働きかけていく。都市ガスの信頼性を維持し、世界のトランジションエネルギーとしてLNGが役割を果たしていく上でも大切なことだ。

日本のガスパイプラインの漏えい率はほぼゼロに近い。これは日本の運用・技術として誇るべきことだ。こうした取り組みを海外に展開するという貢献方法もあるかもしれない。

――今まで政治的に安定しているとされていた豪州などでも、資源ナショナリズム的な動きが出てきた。

国内向けガス供給の不足が懸念される際に、LNG輸出量を四半期単位で制限できるよう、ADGSM(豪州国内ガス安全保障メカニズム)が2月に改正されたほか、CO2排出削減制度「セーフガードメカニズム」の改正法も7月に発効した。新規ガス田は、操業初日からCO2排出ネットゼロを求められることになった。

これまでの資源ナショナリズムは「自国の資源はまず自国で使うべきだ」もしくは「外国資本の言いなりにならず経済的に適正な価格で輸出すべきだ」という二種類だったが、新たに化石燃料に対する圧力や規制が加わってきた。地球温暖化対策の観点から「CO2を排出する天然ガスは開発・輸出すべきではない」という考え方だ。

幸い豪州と日本は経済的な結びつきも非常に強く、最近では食糧、エネルギー、軍事も含む安全保障全体で、お互いを必要とする関係になりつつある。きちんと膝詰めで議論できる相手だと思う。豪州にとってもLNGは国家収入の柱であり、現実解を探ってくるのではないか。政府とも緊密に連携しつつ、われわれ民間としても、しっかり交渉していきたい。

――ロシア・ウクライナ戦争では「天然ガス危機」が初めて起きた。今後LNG市場はどうなっていくのか。

かつて世界経済を支えたエネルギーは石油であり、LNGは当初日本・韓国・台湾の3カ国が主に使うニッチなエネルギーに過ぎなかったが、ロシアによるウクライナ侵攻で一気に世界政治の表舞台へ出てきた。それに伴い、石油同様にLNGも政治色を帯びてきた。こうしたパラダイム転換の中で、われわれはLNGを取り扱っていかなければならなくなってきている。

こうした流れは否定できないが、われわれにとってLNGは、今後とも自由に取引できるコモディティであることが望ましい。これは日本にとっても大事なことだ。政治的な影響があっても安定供給を担保するため、あらゆる面で多様化を進めチャネルを増やす努力を続けていく。

【LNGはCNに向け重要、今冬からSBL運用を開始/エネ庁】

カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、移行期におけるLNGの活用の重要性が増している。一方で、紛争や自然災害などで供給に支障が生じ、市場が混乱する事態もしばしば起きている。資源エネルギー庁資源・燃料部の長谷川裕也・資源開発課長に、これからの「LNG」の役割等について聞いた。

◇◇◇

――LNGの役割は。

CNとエネルギーの安定供給の両立は必須でバランスが重要だ。S+3E(安全+供給安定性、経済性、環境性)の視点が欠かせない。

国の2030年度需給見通し(エネルギーミックス)の一次エネルギー供給において、化石燃料の割合は60%程度。30年断面でも相当程度は化石燃料に頼らざるを得ない。CNを推進する中で、移行期のエネルギーとして二酸化炭素(CO2)の排出量が低いLNG・天然ガスの役割は極めて重要だ。

4月のG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合では、CN社会実現に向け「多様な道筋」というフレーズが提唱された。CN実現に至る道筋は、各国が、自由な方法で実施するというものだが、その道筋においてLNG・天然ガスの役割は大きい。

再生可能エネルギーの拡大に伴う系統電力の変動を、天然ガス火力発電は調整役として担う。石炭等からのLNG・天然ガスへの燃料転換もまだまだ需要があろう。

ガスを切れ目なく使い続けるという視点からLNG・天然ガスの内数と言えるe―methane(e―メタン)にも注目している。これを日本一国だけでなく世界に需要を拡大していくこと、価格を下げることがポイントになろう。メタネーション技術で日本が先行しているうちに普及させることが大切だ。

――突発的に起きるLNG供給危機への対応は。

分散がキーワードだ。完璧なエネルギー源が無いように完璧な供給源もない。供給危機の引き金になるのは自然災害や施設の火災、セーフガードメカニズムのような政策、ストライキなどさまざま。これらに対応するには供給源を分散化させる必要がある。

――ガスの需要見通しはどうか。

IEA(国際エネルギー機関)の今年の年次報告書「世界エネルギー展望」では、天然ガス需要はアジアで年3~5%成長としているが、経済成長を勘案すると、より高い伸びが期待できそうだ。インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアなどではCNに向け主燃料を石炭から天然ガスにシフトしていく。ただし、需要増加に伴ってスポット価格が上がっていくことも覚悟しないといけない。

――LNGの調達について。

中東での紛争を機に、LNGスポット価格が高騰した。スポット価格は価格変動が大きいという特徴がある。将来の需要増を想定すると、長期的な天然ガス・LNGの安定調達は欠かせない。最近は長期契約の重要性が認識されているが、その期間は10年から30年くらいまでさまざまだ。海外には安い再エネを用いてe―メタンを作れる場所がいろいろある。e―メタンの開発に時間が必要なことも踏まえると、超長期の契約を組み合わせていくことは有効だ。

――今年のLNG産消会議の手応えは。

紛争や大寒波など不測の事態に備えた「リザーブ」の確保について議論し、日本は今冬から戦略的余剰LNG(SBL)の取り組みを始めることを紹介した。生産終了井を活用した地下貯蔵や仕向け地フリーなど柔軟な契約も形を変えた「リザーブ」と言える。

LNGのセキュリティーを向上させるためにIEAの機能強化を盛り込んだことは重要だ。これにより不測の事態に際して適切なアドバイスや提言が期待できる。

――産消会議ではLNGバリューチェーンからのメタン排出削減を目指すイニシアティブ「CLEAN」が設立された。

世界的には欧米がけん引するメタン排出削減を目指す「グローバルメタンプレッジ」の動きがある。「CLEAN」はJERAとKOGAS(韓国ガス公社)が中心になり、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が支える形でスタートしたが、米国や豪州、欧州委員会もこのイニシアティブをサポートする共同声明に署名している。漏えいメタンを削減する第一歩として、規制ではなくボランタリーなアクションを後押ししていく。この動きを横展開してメンバーを増やしたい。都市ガスや電力業界もこの輪に入ってほしい。海外のガス会社も興味を持っていると聞く。今後は先進事例を共有するなど取り組みを広げていく。

【LNG燃料船を拡大、多様な船種で導入進める/商船三井】

近年、船舶用燃料としての利用が進むLNG。世界の物流機能を維持しながら、海運分野の脱炭素化を着実に進めていくためには、欠かせないエネルギーだ。商船三井は2050年のネットゼロエミッション実現に向けて、LNG燃料船の導入に戦略的に取り組んでいる。同社で燃料事業全体を担当する髙橋和弘執行役員に話を聞いた。

◇◇◇

――燃料の脱炭素化は大きなチャレンジだ。

当社は21年に公表した「商船三井グループ環境ビジョン2・1」で、50年までのネットゼロエミッション実現を目標として掲げた。船舶用燃料の転換は目標達成に向けた最重要課題だ。硫黄酸化物(SOχ)濃度の引き下げなど、従来の重油燃料についても環境規制の強化は段階的に進んでいたが、脱炭素社会への移行という遠い将来に向けて燃料を大きく切り替えることは、船舶燃料の世界にとって100年に1度というレベルの転換点だと受け止めている。

先は長いが、今すぐ取り組めるものからまず取り組むというのが基本的な姿勢だ。その意味で、世の中にすでに広く流通しているLNGは極めて有用で、一番の選択肢になる。欧州が先行していた港湾でのLNG供給インフラの整備も世界的に進んでおり、日本を含む北東アジアでもすでに53カ所存在ないし計画されていると言われている。

――LNG燃料船導入の具体的な計画は。

今年改定した環境ビジョン2・2ではLNG・メタノール燃料の外航船について、30年までに90隻というマイルストーンを設定している。当社が保有もしくは長期傭船している基幹船隊の1割以上を占める規模だ。LNG燃料船は建造費がかさむ一方、燃料コストは他の燃料に比べ相対的に安いと見通されており、大型船を中心に導入する方針だ。そのため、燃料消費量に占めるLNGの比率はさらに高くなる。

現在までに発注済みのLNG燃料船は27隻で、内訳は自動車専用船13隻、石炭や鉄鉱石などのばら積み船10隻、VLCC(大型石油タンカー)4隻。「BLUE」というシリーズ名を付けた自動車専用船は、今後順次竣工していく。他の船種でもLNG燃料を広く導入する方針で、例えばクルーズ船への導入も前向きに検討している。このほどグループ会社を通じて買収を決定したケミカルタンカー会社船隊にもLNG燃料船が含まれており、当社グループの船隊に加わることになる。

なお、海運業界全体でもLNG燃料船は着実に増えていく見通しだ。15年には63隻だったのが、23年には431隻まで増え、発注済みの船舶も110隻ある。今後も毎年、100隻以上のペースで導入が進むと見ている。

――内航船では、今年1月に国内初のLNG燃料フェリーが運航を開始した。

グループ会社が大阪―別府(大分県)間で航行するフェリー2隻が今年、LNG燃料を採用した新造船に入れ替わった。2隻のうち、日本初のLNG燃料フェリーとなる「さんふらわあくれない」がシップ・オブ・ザ・イヤー2022の大型客船部門賞を受賞するなど業界の評価は高く、旅客からも「黒煙がほぼ出ない」など環境面で良好な評価をいただいている。燃料のLNGは別府港で、九州電力から複数のLNGローリーを接続した独自の方式で供給を受けており、すでに200回以上の実績がある。

LNG燃料フェリーは大洗(茨城県)―苫小牧(北海道)航路でも導入を決定しており、25年から2隻が航行を開始する予定だ。LNGは当面は別府港と同様の供給方式で、北海道ガスや石油資源開発から調達する計画だ。ただ、LNGローリーによる供給を毎日行うことの作業面の負担が重いので、燃料供給船の導入なども検討していく。

――LNG燃料船は、その後のゼロエミッション燃料導入の布石でもある。

LNG燃料船は中長期的に相応の比率を占め続けるが、バイオメタンやe―メタンなどのゼロエミッション燃料に段階的に切り替えていく。これにより船舶は長期利用することが可能になる。並行して水素やアンモニアなどの利用も拡大する方針で、ゼロエミッション燃料の使用割合は30年に5%、ネットゼロエミッション船の数は35年に130隻というマイルストーンを掲げている。

他には風力の活用にも取り組んでおり、自社開発の風力推進装置「ウインドチャレンジャー」の搭載隻数は30年25隻、35年80隻を計画している。50年のネットゼロエミッションに向けてさまざまな技術を組み合わせて実現を目指していく。

――燃料転換のための社内体制も強化している。

環境対応の取り組みの重要性が増していることに対応し、燃料調達の組織と体制は段階的に拡充している。かつては燃料部として従来燃料の調達を主に担ってきたが、今年4月には燃料のグリーントランスフォーメーション(GX)を進め、さらに代替燃料に関わる事業に関与していく意思を明確にするため、燃料GX事業部に名称変更した。

燃料GX事業部は、燃料調達戦略、LNG燃料、ゼロエミッション燃料戦略の3チームで構成している。50年のネットゼロエミッション実現に向けて、各チームが連携して取り組みを進めている。

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