GENIX-CN70

192.12

-2.35

5月17日終値

5月17日東証 GENIX-CN70は4週ぶりに下落。総じて利益確定売りに押される展開となったが、中で好決算を発表した岩谷産業、大規模な自社株買いを発表したENEOSが逆行高。
市況情報

 5月17日 GENIX-CN70は前週末比2.35ポイント安の192.12と4週ぶりに下落した。総じて利益確定売りに押される展開となったが、その中で13日に決算を発表した岩谷産業、14日に決算・大規模な自社株買いを発表したENEOSの株価が急伸した。どちらも一時本年高値を更新するなど人気付いた。

 岩谷産業の決算について市場関係者は、「前期実績も今期予想も2桁増益の好決算。ただ今期の配当金予想額が据え置かれたため、株価は急伸後伸び悩んだが、持分法対象のコスモエネルギーの寄与分も見込め、今後増配期待から見直される可能性がある」とする。

 ENEOSの自社株買いは上限が発行済み株式総数の2割強におよぶ大規模なもので、市場にサプライズを与えた。「経営陣の資本効率・株主還元への意識の高さを感じる内容。大型投資がなく、JX金属がIPOに向けて資産売却を進める中、財務体質が良好になっていることが背景にある」(大手証券アナリスト)と見ている。

(2024年5月17日)

 【過去解説記事】

 GENIX-CN70は10日、前週末比2.33ポイント高い194.47ポイントと3週連続で値上がりし、前週に続いて過去最高値を更新した。

 指数構成銘柄では大阪ガス、北海道ガスなどが過去20年来の高値を更新。大阪ガスは8日発表の自社株買いが好感されている。「3月発表の中期計画で株主資本配当率に基づく増配方針が打ち出されたばかりの株主還元策で、サプライズとして受け止められた」(アナリスト)。北海道ガスは4月30日発表の株式分割(1対5)や今期実質増配を手掛かりに人気化している。PBRは0.8倍台に上昇し、課題の1倍割れ解消が現実味を帯びてきた。

 岩谷産業も急伸し、4月に付けた最高値9311円を射程に捉えてきた。同社の3月期決算は5月13日午後2時半に発表予定だが、同社がさきごろ筆頭株主となったコスモエネルギーホールディングスが昨日決算発表を行い、堅調な業績と自社株買い、年間300円配当を維持する方針が明らかになった。コスモエネの株価は本日、一気に高値を更新、岩谷産業の株価支援材料になっている。

(2024年5月10日配信)

  中東産LPG日本向け長期契約価格(サウジCP)5月分は、プロパンが1㌧当たり580ドルと前月比35ドル下落した(下落率5・69%)。値下がりは4月分に続いて2カ月連続。

  ブタンは前月比35ドル値下がりして(下落率5・65%)1トン当たり585ドルとなった。ブタンも2カ月連続で下落した。

(2024年4月26日配信)

 中国税関が18日に発表した3月のLNG輸入量は前年同月比24・1%増の665万㌧となり、3月としては2021年の564万㌧を上回り3年ぶりに過去最高を更新した。1~3月の累計輸入量は同20・4%増の1985万㌧と、年間輸入量が過去最高だった21年同期を0・8%上回った。

 今年第1四半期の国内総生産は5・5%増と昨年第4四半期の5・2%増を上回った。輸出産業を中心に二酸化炭素排出削減のためのガスシフトも進んでいる。同期間のLNGスポット市況が前年同期を4割下回るなど割高感が薄れたことも需要喚起につながったようだ。今後の見通しについてエネルギー・金属鉱物資源機構調査部竹原美佳部長は、「国際市況はこのところ上昇に転じており、LNGスポット調達は目先一服しそうだが、地方政府のガス火力建設推進や船舶燃料のグリーン転換などもありガス需要そのものは高まる方向」としている。

(2024年4月18日配信)

 東証4月12日 東京ガスの株価が一時前日比54円高の3899円と前日に続いて上場来高値を更新した。同社株は今週に入って騰勢を強め、年初からの株価上昇率は20%に達した。3月中旬、大阪ガスの時価総額が一時、東京ガスを逆転したが、東京ガスが再び首位に立ちリードを広げている。4月19日に全国知事会が東京ガス横浜ステーションを視察し、e‐メタン製造実証の説明を受ける予定となっている。カーボンニュートラルに向けた同社の技術力に注目が集まりそうだ。株価上昇により、株価純資産倍率(PBR)は0.94倍へと上昇。1倍乗せが視野に入ってきた。

 都市ガス株では、北海道ガスの株価も上昇基調にあり、この日も前日マークした上場来高値2960円まで一時買い進まれる場面があった。年初からの上昇率は34%に達するが、同社株のPBRはいまだ0.7倍台にとどまり、依然割安感が漂う。北海道では半導体工場の新設で電力消費の大幅な伸びが予想され、北海道電力の株価もこのところ大幅に上昇している。

(2024年4月12日配信)

 4月3日 米原油先物(WTI)は前日比28セント高の85.43ドルと3日続伸、本年の高値を更新した。ウクライナによるロシア主要製油所への無人機攻撃や、イラン大統領によるイスラエルへの報復表明など地政学的リスクの高まりが背景にある。また週間統計で米国原油在庫が前年同期比18.5%減と減少が目立ったことも材料視されている。

 注目されたOPECプラス合同閣僚監視委員会は、生産目標維持を決定。また、米連邦準備理事会パウエル議長は講演で利下げを急がない姿勢を示したとされる。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部・芥田知至主任研究員は、「中東、ウクライナ情勢は今後一段と動向が注視される。また、米金融政策、中国当局による経済運営、産油国の生産方針なども引き続き注目される。ただ、米中の景気は石油需要を上振れさせるほどには強くないとみられ、相場の上昇傾向を決定づける材料は出にくいと思われる。相場は再び一進一退の推移となりやすい」と指摘。もっとも、今年後半にかけて米利下げを受けてドル安が進む展開となれば、ドル建ての原油価格には割安感が生じ上昇圧力がかかりやすくなるとし、今年度は1バレル95ドル程度の上値が見込めるとしている。

(2024年4月4日配信)

 GENIX-CN70は年度内最終売買日となった3月29日、前週末比0.55ポイント上昇し189.41と、2週続けて最高値を更新した。3月末割り当てで1対10の大幅な株式分割を実施した三菱重工業は権利落ち後も堅調で、修正株価は連日の最高値となった。GENIX-CN70構成銘柄では他に理研計器が1対2、川崎汽船が1対3の株式分割を3月末割り当てで実施した。

 岩谷産業の株価が3連騰で、連日の上場来高値更新。3月28日にコスモエネHD株式を追加取得し、持ち分法適用会社にしたと発表したことが材料視されている。コスモエネの今期純利益予想は780億円、岩谷産業は335億円。持ち分比率2割相当の利益が来期以降、上乗せされるインパクトの大きさが期待されているようだ。また、会社側は本件株式取得に要する資金を借り入れで賄うとしており、「増資による一株当たり利益の希薄化が回避される見通しになったことも好感されている」(国内証券調査部)という。

(2024年3月29日配信)

 米国3月26日、米パイプラインガス(ヘンリーハブ=HH)先物価格が終値で5日続落し、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.575ドルに下落。2月20日に付けた本年安値1.576ドルを1カ月ぶりに割り込んだ。ザラ場安値は1.4㌦台まであった。

 米エネルギー情報局(EIA)が3月21日に発表した週間データによると、米国の地下ガス在庫量は3月15日時点で前年比21%増、過去5年間の平均値に対しては41%上回っている。エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役は、「気温が上がり需要が低下して、在庫がさらに積み上がったことと、生産がすぐには低下しないことが主要因」と指摘する。こうした在庫の荷余り感が先物市況の上値を重くしているようだ。

 HH先物価格の過去15年間の値動きを振り返ると、期近先物価格が1ドル台まで下落した年は2012年、16年、20年の3回あり、当該年の安値形成月はそれぞれ、4月(1.9ドル)、3月(1.6ドル)、6月(1.4ドル)となっている。春に安値を付ける習性と、この間の価格水準が切り下がる傾向が見て取れる。

(2024年3月27日配信)

 3月22日、ガスエネ株価指数カーボンニュートラル70(GENIX‐CN70)は2週間ぶりに過去最高値を更新した。GENIX‐CN70構成銘柄はほぼ全面高となり、K&Oエナジー、三菱重工、岩谷産業、大阪ガスなどが最高値を更新した。

 なお、三菱重工(1株→10株)、理研計器(1株→2株)、川崎汽船(1株→3株)は3月28日付で株式分割の権利を落とす。株式分割のメリットとしては、単位投資額の引き下げによる投資家層のすそ野拡大、流動性の向上などが指摘される。昨年以降で、株式分割を実施したリンナイ、NTT、三菱商事、京セラは、権利落ち後も堅調な値動きを保っている。

(2024年3月22日配信)

 3月15日 ENEOSHD(GENIX―CN70構成銘柄)の株価が朝方から買い進まれ、5年3カ月ぶりに700円台に乗せてきた。他にもINPEXや石油資源開発、コスモエネルギーHDなどの石油関連株、資源高が利益に結び付く商社株も軒並み値上がりしている。コスモエネルギーは国内大手証券が投資格付けを引き上げたことも好感され、株価は上場来高値を更新した。

 株式市場は、米原油先物(WTI)が14日、期近4月渡し終値で1バレル81.26ドルと続伸し、昨年11月6日の80.82ドル以来の80ドル台乗せとなったことを材料視しているようだ。国際エネルギー機関(IEA)が同日公表した市場レポートでは、今年の石油需給は供給不足になるとの予測が示されている。産油国の自主減産延長による供給減や、紅海におけるタンカー襲撃で海上輸送距離が延びておりバンカー燃料の需要増加を織り込んだという。もっとも原油市況は過去1年余りにわたって、おおむね70ドルから80ドルのレンジで推移しており、80ドル台では上値の重さも意識されそうだ。

(2024年3月15日配信)

 3月8日 大阪ガス(GENIX CN‐70構成銘柄)の株価が前日比153円高の3350円で寄り付き、直後に230円高の3427円まで上昇。1月11日に付けた上場来高値3242円を一気に更新した。同社は7日、3カ年中期経営計画を策定し、配当を原則減配せず維持または増配する累進配当制度を導入すると発表し、好感された。

 2024年3月期の配当金は前期比12円50銭増配して72円50銭(従来予想65円)に、25年3月期は95円を目指す方針も示した。株主資本配当率を3%とする方針を掲げ、機動的な自己株取得も検討するとした。この他、自己資本利益率(ROE)の目標は26年度に8%程度、投下資本利益率(ROIC)は5%程度を目指す。「株価を意識した経営姿勢に変化していると株式市場が受け止めており、都市ガス株の中でも相対的な値上がりが目立ってきている」(中堅証券)という。この日前場終値での時価総額は、大阪ガスが1.43兆円、東京ガスは1.41兆円となり、大阪ガスが東京ガスを逆転した。

(2024年3月8日配信)

 2月22日 東証では朝方から買いが先行し、日経平均株価は大幅に反発した。終値は初の3万9000円台で、1989年12月以来の史上最高値更新となった。注目された米エヌビディアの決算が市場関係者の事前予想を上回り、3連休控えにもかかわらず、マーケットのセンチメントは強気に傾いた。半導体関連株をリード役に、主力株を中心に幅広く買い進まれた。

 GENIX‐CN70構成銘柄も軒並み上伸した。三菱重工業が上場来高値を更新し、日本酸素HD、川崎汽船は最高値をうかがう動き。原油市況の上昇を背景に石油資源開発など石油関連株も値上がりした。

(2024年2月22日配信)

 米国パイプラインガス市場価格(ヘンリーハブ先物)が2月15日、8日連続安となり、百万BTU(英国熱量単位)当たり1.5㌦台まで下落、2020年6月以来の安値水準となった。在庫の積み上がりが背景にあるという。

 エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80㌦弱と堅調なことから、パーミアン盆地を中心にシェールオイルの生産が盛んで、随伴ガスの生産量も増えている。気温が高めに推移していることもあり、地下在庫は過去5年間の最高水準に到達している」と指摘。

 先物市場の中心商いが春の需要閑散期に移りつつあることから、市況は当面弱含みで推移しそうだ。
(2024年2月16日配信)

2月12日 米国で天然ガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格=HH)が5日続落し、期近終値は百万BTU(英国熱量単位)当たり1.768ドルに下落した。1.7ドル台は2020年7月以来の安値となる。市中在庫が高水準にあり、市場のセンチメントを圧迫している。

HHは昨年11月以降、3ドルを割り込むなど市況の低迷が続いているが、生産量が落ち込む兆しはいまだ見えないという。エネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は「原油市況が1バレル80ドル弱と堅調に推移していることから、オイルリッチなパーミアン盆地を中心に油狙いの生産が盛んになっている。このため副産物であるガスの生産も増加している」と指摘する。

(2024年2月13日配信)

米国市場でガス市場価格(ヘンリーハブ先物価格)が続落している。7日に心理的な下値めどと見られていた百万BTU(英国熱量単位)当たり2ドルを割り込むと、8日終値は一段安となり1.917ドルまで下落した。およそ3年5カ月ぶりの安値水準となる。

市況下落の背景には、マーケットの荷余り感があるようだ。「このところの気温上昇で暖房用需要が低下しており、地下在庫量は過去5年間の上限レベルに到達している。当面は上値の重い展開が続きそうだ」(エネルギー・金属鉱物資源機構・白川裕調査役)。

ヘンリーハブ価格の下落に伴い、米国産LNGの輸出価格も低下しており、現状は世界の主要輸出国の中でも最も安価な水準となっている。

(2024年2月9日配信)

2月6日 東証後場 三菱重工業の株価が昨日の1万円初登頂に続いて一段高となった。この日午後、同社は3月末割り当てで株式1株を10株に分割すると発表。合わせて発表された今2024年3月期第3四半期連結決算は、売上高が前年同期比11%増、純利益は同倍増となるなど好調ぶりが明らかになった。通期の受注見通しを6兆円とし、従来予想に4000億円上積みした。これら大幅な株式分割と好調な業績動向が素直に好感され、買いが買いを呼ぶ好循環となっている。

同社株は1年前の2月には5000円前後で推移しており、そこから株価水準はちょうど2倍になっている。

(2024年2月6日配信)

1月31日 サウジアラムコがこのほど日本のLPガス輸入事業者に通知したプロパン2月分出荷価格(サウジ2月CP)は、前月比10ドル値上がりして630ドルとなった。値上がりは昨年8月分(470ドル)以降、12月分の変わらずを挟んで8カ月連続。

LPガス市況に影響する原油市況が、12月初旬を底に水準を切り上げているほか、世界最大のLPガス輸出国である米国において、プロパン在庫の取り崩しが進み、市況が上昇したことが背景にある。米国ではLPガスの一大輸出地域であるメキシコ湾で濃霧が観測されており、輸出作業への影響も警戒されたという。サウジCP2月ブタンも、前月比10ドル値上がりして640ドルとなった。

(2024年2月1日配信)

1月26日GENIX-CN70は前週比0.64ポイント値上がりして169.36ポイントとなった。7週間連続の上昇で、3週続けて統計開始来の最高値を更新した。一方、東証株式市場全体としては、このところの上げピッチの速さから利食いが広がり、東証株価指数(TOPIX)は7週ぶりに値下がりした。

GENIX-CN70の構成銘柄で値上がりが目立ったのは、25日に2023年12月期決算を発表したHIOKI。24年12月期も増収増益を見込み、配当金を年200円に連続増配する方針が好感されたようだ。

このほか、三菱重工業、三菱化工機が高値圏で頑強な値動き。SMBC日興証券が目標株価を引き上げたウエストホールディングスも下値を切り上げている。

(2024年1月26日配信)

 欧州パイプラインガス先物価格が17日、百万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル台まで下落し、昨年8月以来の安値水準となった。北東アジアLNGスポット価格も続落しており、17日は昨年6月以来の9ドル台を付けている。先物の決済期日が2月から3月に移り冬場の需要期を過ぎることで、足取りが弱くなっている。昨年の安値は欧州ガス先物価格が7ドル台、スポットLNGは8ドル台だった。

 当面の市況動向についてエネルギー・金属鉱物資源機構の白川裕調査役は、「カタールから欧州にLNGが年間1500万トン供給されており、スエズ運河の通航リスクが警戒されているものの、それでも欧州の在庫水準が依然として高いため、中東からの輸送に支障が生じても当面の供給は何とかなると見られている。昨年10月から輸出を再開したエジプトLNGもまだ量は少ないとはいえ心理的な支えになっている。不需要期の相場は数年前なら3~4ドルもありえたが、安価になったスポットLNGを中国が仕込む動きも見られるため、今回はそこまで下がらないだろう」とする。また、「足元のスポット需要は弱いが、供給力に余裕があるほどの状況でもない。幸いにして供給設備のトラブルは昨年から起きていないが、いつ起きても不思議はない。先行きを楽観視するわけにはいかない」と指摘する。

(2024年1月18日配信)

東京株式市場は年末・年始と値上がり基調を強めており、GENIX-CN70も12月15日から1月12日終値まで5週連続で上昇した。1月12日の終値は167.67ポイントとなり、昨年9月15日にマークした指数算出以来の最高値165.83ポイントを4カ月ぶりに更新した。

GENIX-CN70構成銘柄では、商社株の値上がりが目立ち、伊藤忠商事、住友商事が最高値を更新。海運株も高値圏でしっかり。個別銘柄では、三菱重工業、愛知時計電機が最高値を付けた。本日午前、2024年8月期第1四半期決算を発表し、大幅な増収増益が確認されたウエストホールディングスが急伸した。

(2024年1月12日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)1月分は、プロパンが前月比10㌦高い1トン620㌦。ブタンも同じく10㌦値上がりして630㌦となった。小幅高ながら、極東マーケットは足元で強弱感が交錯しており、先行きの方向感は乏しい状況。米国のプロパンスポット市況(モントベルビュー)は12月分が1トン357㌦と、前月から約25㌦値上がりした。依然として近年の安値圏での値動きではあるが、市中の在庫水準は過去5年平均並みまで減少しており、底堅さも見られる。

(2024年1月10日配信)

1月5日 2024年の年明けの東京株式市場は、能登半島地震を受けて4日の大発会は売り物先行でスタートしたが、新NISA開始に伴う投資資金流入などによる先高期待から押し目買いが優勢となり、結局、東証株価指数(TOPIX)は4日、5日と続伸した。

GENIX-CN70も12月最終週に続いて上昇し、5日終値は164ポイントと、5週ぶりに160ポイント台を回復。昨年9月15日にマークした最高値165.83に急接近した。指数構成銘柄では、大阪ガスが大幅高となり、5日に一時3111円まで上昇。12月13日に付けた最高値3077円を上回った。4日以降終値ベースでも初めてとなる3000円台を維持している。このほかでは、海運株が人気を集めており、日本郵船、商船三井が最高値を更新した。

(2024年1月5日配信)

12月29日 東京証券取引所最終売買日(大納会)は、今年1年の相場を象徴するような堅調な展開だった。その中でGENIX-CN70は前週に続いて上昇し、3週連続高で今年を締めくくった。GENIX-CN70の年間騰落率はプラス25%となり、東証株価指数の上昇率と互角の好成績だった。

GENIX-CN70構成銘柄の中で値上がりが目立ったのは、川崎汽船、日本酸素、栗本鉄工、愛知時計電機、関電工など。一方、不調だったのは、イーレックス、レノバ、テスHD、ウエストHDなどだった。なお12月末割り当てで、京セラが1株を4株、三菱商事は1株を3株に株式分割した。GENIX-CN70もこれに合わせて、株式分割の影響を考慮した修正株価指数を算出している。

(2023年12月29日配信)

12月22日 GENIX-CN70は前週に続いて上伸した。全般は高安まちまちだが、値がさ株の海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)がそろって本年高値を更新し、CN70を押し上げた。また、工場新設で恩恵を受ける理研計器が12月20日上場来高値を更新した。

海運株が動意付いたのは先週末。紅海で武装組織による商業船への攻撃が相次いだことで、海運会社がスエズ運河の航行を見合わせ、迂回経路による輸送距離の延長などで海運市況が上昇するとの思惑が働いた格好。海運株はコロナ禍前後の市況高騰局面で株価が5倍以上に跳ね上がっており、その記憶がまだ新しいだけに思惑が先行しやすいようだ。

(2023年12月22日配信)

12月15日 GENIX-CN70は3週ぶりに反発した。指数構成銘柄では、理研計器の株価が13日に上場来高値を更新。大阪ガスも同日最高値を更新し、未踏の3000円台に一時到達した。

岩谷産業の株価はコスモエネルギーホールディングスの筆頭株主になると発表した12月1日以降、大きく値下がりしたが、15日終値は7日ぶりにプラスに転じた。

14日に一時5996円まで下げ、4月初旬以来8カ月ぶりとなる6000円大台割れを見たことで、値ごろ妙味が台頭したようだ。9月高値からこの安値までの下落率は26%に達し、一株当たり純資産5249円も意識される水準となっていた。チャート面から当面の戻りめどを探ると、25日移動平均線の6866円、9月高値から直近安値までの下げ幅の半値戻し6770円など、6800円あたりが意識されそうだ。

(2023年12月15日配信)

12月13日 GENIX-CN70構成銘柄の大阪ガスが4日続伸し、一時3077円の高値を付けた。3000円台に乗せたのは上場来初。12日大引け後に、日本経済新聞が「伊藤忠と大阪ガス、世界最大級の水素生産に最大4割出資」と報じ、これを材料視する買い注文が朝方から集まった。

株価は11月初旬、自社株買いの発表を契機に大きく上放たれ、過去16年来の上値抵抗線となっていた2600円前後の節を突き抜けてきた直後とあって、しこり感のないチャート妙味も好感されているようだ。

12日に発表された欧州の水素企業Everfuelのニュースリリース

(2023年12月13日配信)

12月8日 GENIX-CN70は前週に続いて下落した。急速な円高進行や世界的な景気減速懸念を受けて、東京株式市場はこの日、ほぼ全面安となった。GENIX-CN70構成銘柄にも利益確定の売りが先行した。中でも、原油先物市況の下落を受けて、石油、造船、商社、海運株などが大きく値を下げた。

12月1日引け後にコスモエネルギーホールディングス株式大量取得を発表した岩谷産業は、週明け4日から株価が大きく下げ、発表前の終値7141円から8日安値6388円まで5日間で10%を超える下げとなった。9月の本年高値8040円からの下落率は20%に達している。アナリストからは「コスモエネ株取得に1千億円を超える大金を投じることについて、どのようなリターンを見込んでいるのか、できる限り定量的な説明が欲しい。株価の下げは合理的な反応。投資家は追加情報を待っている」との声が聞かれる。コスモエネ株が取得価格を割り込んでいることも嫌気されているようだ。

(2023年12月8日配信)

米原油先物価格(WTI)は12月6日、前日比2.94ドル安の69.38ドルと5日連続で値下がりした。節目と見られた1バレル70ドル台を5カ月ぶりに割り込んだ。9月に付けた本年高値93.68ドルからの下落率は26%に拡大するなど下値を模索する動きとなっている。

注目された11月30日のOPECプラス会合は、各国から自主減産(来年1~3月期に日量約220万バレル)が発表されたものの、想定の範囲内と受け止められたようで、相場の下落基調を反転させるには至らなかった。

相場が弱含んでいるのは、世界的な景況悪化に伴う需要減少への警戒があると見られる。「不動産不況が続く中国経済の停滞や、ここまでの利上げで減速が見込まれる米国景気などを考慮すると石油需要は伸び悩み、自主減産してもなお需給は引き締まらないのではないか」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部芥田知至シニアアナリスト)との指摘がある。当面は今週末発表される米雇用統計をはじめ、主要な経済指標を横目にみながら神経質な値動きが続きそうだ。

(2023年12月7日配信)

12月1日 岩谷産業(GENIX‐CN70構成銘柄)はこの日、コスモエネルギーホールディングスの株式を追加取得すると発表した。旧村上ファンド系と見られる既存株主から計約1740万株を1053億円で取得する。取得済みの持ち株と合わせた保有比率は19.93%となり、同社の筆頭株主になる。

1株当たりの取得価格は約6051円で、この日の東証終値5616円を約8%上回るが、価格の算定根拠については明らかにしていない。今後については、「より一層連携を深め、新たなシナジーを創出する」としているが、具体的な方向性はまだ示されていない。また、今3月期連結業績への影響については「精査中」としている。

サウジCP12月分は、前月と同価格の1バレル610ドル、ブタンも変わらずの620ドルとなった。

(2023年12月1日配信)

11月24日 東京証券取引所で三菱重工業(GENIX‐CN70構成銘柄)の株価が前日比529円高と大幅続伸し、およそ2カ月ぶりに8800円台まで水準を切り上げた。

同社は11月22日に防衛事業説明会を開催し、来年度からの3カ年は防衛力整備計画の大幅な拡充を受けて同社の事業規模は2倍以上になると発表した。過去長期にわたり同事業規模は5,000億円弱で推移していたが、来年度からの3カ年は1兆円規模になるとした。祝日をはさんでこの日は朝方から買いが先行、業績拡大への期待感を織り込む動きを見せた。株価が1万円に近づいていることから、株式分割を催促する値動きにも映る。

ガスエネルギー新聞が注目する同社のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みも続いている。弊紙11月20日付では三菱重工エンジン&ターボチャージャの「水素混焼50%で安定燃焼、5700キロワット級ガスエンジン」を技術面トップで紹介している。また、同日付紙面には「水素特集」を掲載しており、三菱重工の高砂水素パークなどを詳しく紹介している。

(2023年11月24日配信)

11月14日の東京証券取引所で大阪ガスが4日続伸し、ザラ場の高値は2920.5円まで買い進まれた。11月7日にマークした上場来高値2914.5円を5営業日ぶりに更新した。10月27日発表の中間決算が好感されているほか、同日発表の自社株買いも歓迎されているようだ。マーケットでは、大阪ガスの株価格付けを従来から「買い」としていたみずほ証券が、目標株価を2600円から3300円に引き上げたとの情報もこの日伝わった。

大阪ガスの株価をローソク足(日足)で見ると、11月9日から10日にかけて、さらに10日から13日、13日から14日にかけても連続して窓「空」ができた。4本の陽線と「三空」で形成される高値圏でのこの形は「三空踏み上げ」と呼ばれ、チャートを投資判断のよりどころとする投資家は、空売りを仕掛ける急所とみる。同社株の信用買い残は、売り残が買い残を超過した状態にある。確かに目先は急伸した後だけに強弱感が対立しやすい場面と言えるが、この日の株価は株価純資産倍率が0.7倍台と依然として割安な状態にあることから、むしろ売り方の手仕舞い(買い戻し)による一段の上昇を読む向きもある。

関連記事 大阪ガスが上昇率首位、愛知時計は最高値を更新/GENIX―CN70 - ガスエネルギー新聞 (gas-enenews.co.jp)

(2023年11月14日配信)

 11月2日のGENIX‐CN70は3週ぶりに反発した。自社株買いを発表した大阪ガスが急伸し、最高値を更新したほか、業績好調の日本酸素、愛知時計も高値を更新した。

 中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の11月分は、プロパンが1トン当たり前月比10㌦値上がりして610㌦(前月比1.67%高)となった。ブタンは同5㌦値上がりして620㌦(同0.81%高)。プロパン、ブタンともに4カ月連続で値上がりした。

 LPG市況に影響を与える原油相場の値動きはこのところ重くなっているが、LPG市況はこれから需要期を迎える季節性もあって、先高観が根強いようだ。日本向け米国産LPGの航路に当たる中南米パナマ運河が、渇水の影響で渋滞解消に時間がかかるとの見通しも強気の見方を支えているようだ。

 CPのこの1年間の価格推移を振り返ると、プロパンは2月に790㌦のピークを迎え、その後は大きく値下がりして、7月に400㌦のボトムを付けている。ブタンも同様に2月の790㌦でピークを打ち、7月には375㌦の安値を付けている。

(2023年11月2日配信)

10月27日 GENIX-CN70は前週末終値から0.2ポイント下落して155.81と2週連続で下落した。東証株価も0.06ポイント下がって142.76となった。

10月以降、株式市場は調整色を強めており、9月最終週との比較ではGENIX-CN70、東証株価ともに約3%下落している。

GENIX-CN70の構成銘柄のうち9月末比で上昇したのは全体の2割16銘柄にとどまる。その中で愛知時計が本年高値を更新したほか、日本酸素、栗本鉄工、川崎汽船などが高値圏で頑強な値動きを見せている。

(2023年10月27日配信)

10月19日の米原油先物(WTI)価格は3日続伸。中東地域の紛争拡大への懸念が市況を押し上げた。

国際ガス市況も値上がりしており、欧州パイプラインガス先物価格(TTF)は13日に百万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル台、スポットLNG価格は18日に19ドル台へと上昇している。

イスラエル沖の海洋ガス田(タマル)が操業を停止したと報じられており、このガスを原料とするエジプト産LNGの出荷に影響が及ぶ恐れが指摘されている。

(2023年10月20日配信)

 10月9日の米原油先物(WTI)市況は2日続伸し、1バレル前日比3.59㌦高の86.38㌦に上昇した。6日の米雇用統計は市場の予想を上回る数値で、長期金利上昇を促したが、原油市場は底固い動きを見せた。そこに、イスラエル・パレスチナ間で大規模な武力衝突が発生。中東の地政学的リスクが高まったことで、買い気が優勢となったようだ。また、本年高値を付けた9月27日以降の下げが急だったこともあり、買い戻しも入りやすかったと見られる。

 一方、連休明け10月10日の東京株式市場は、朝方から買い戻しの動きが広がりほぼ全面高でスタート。GENIX‐CN70構成銘柄もこのところ下げがきつかった石油株などが買い気配で始まるなど総じてしっかりした動き。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員は当面の原油相場について、「今回の武力衝突にイランの関与があるのかどうかなど中東情勢には不透明な部分があり、不安定要素が増えた格好だ。他方、このところの米長期金利上昇やドル高が原油相場を下押しするとの見方や、米欧の金融引き締め効果で石油需要が鈍化するとの懸念も根強い。さらに中国の不動産不況、全米自動車労組(UAW)のストライキ、米予算審議の難航なども需要を鈍化させる要因として意識されている。当面は地政学的リスクや需給などの強弱材料が交錯する中で、不安定な推移が見込まれる」としている。(了)

(2023年10月9日配信)

米原油先物が10月4、5日と続落し、1バレル82㌦台まで下落、8月30日以来の安値水準となった。4日は下落率が5・61%に達する大幅な下げで、下落率が5%を超えるのは5月2日以来5カ月ぶり。9月27日に付けた本年高値93・68㌦から5日までの下落率は12%強に広がった。市場では、米ガソリン在庫の急増や強含んでいる長期金利の動向を警戒。今晩の米雇用統計の発表を注視している。

一方、米天然ガス先物(HH)価格は3日続伸し、今年3月以来となる百万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル台に乗せてきた。

(2023年10月6日配信)

米原油先物が10月4日、前日比5.01㌦安の1バレル84.22㌦と急反落し、8月31日以来の安値水準に後退した。1日の下落率の大きさは5.61%に達した。5%を超える大幅な下げは5月2日の5.29%以来、5カ月ぶり。市場では、同日発表された米石油在庫統計でガソリン在庫の急増が明らかになり、これが利益確定売りを誘ったとの見方が出ている。

JOGMECの首席エコノミスト・野神隆之氏は、「統計で明らかになった米ガソリン需要の低迷は、この時期としては2000年以来の低水準。他にもロシアの軽油輸出禁止の一部解除検討の報道、サプライズのないOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会の内容などの弱気材料がそろって現れた。このため、市場は狼狽売りの様相を呈しているが、今年第4四半期に供給不足に陥るとの認識に変化はなく、市場のセンチメントが根本的に変化したとは言い切れない。原油市況は売られ過ぎ気味の領域に入りつつあり、値頃感から買い戻しが発生しやすい状況ではあるが、まずは明日6日発表予定の米国雇用統計が注目される」としている。

10月5日の東証は朝方、昨日までの大幅安に対する自律反発の動きとなり、TOPIXが6日ぶりに反発するなど全般に買い物優勢の始まりとなったが、原油の急落を受けて、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEXや石油資源開発など石油関連株は売り気配のスタートとなった。

(2023年10月5日配信)

中東産LPGの日本向け長期契約価格(サウジCP)の10月分は、プロパンがトン当たり前月比55㌦値上がりして600㌦(前月比9.09%高)、ブタンは同50㌦値上がりして 615㌦(同9.82%高)となった。プロパン、ブタンともに3カ月連続で値上がりした。背景には原油市況の上昇が指摘されている。

(2023年9月29日配信)

東証9月28日前場の寄り付きは、GENIX‐CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮など石油株が大幅高でスタートした。朝方は全般に利益確定売りが先行する中で、石油関連株の値動きの強さが目立った。石油資源開発は2008年以来、13年振りとなる6000円台に到達した。

 前夜27日の米原油先物(WTI)価格は前日比3.29㌦値上がりして1バレル93.68㌦となり、7営業振りに今年の高値を更新した。また、当面の戻りのめどと見られていた昨年10、11月に付けた92㌦台の高値を一気に上抜いてきたことで、市場関係者の間では先高ムードが一層強まっている。

(2023年9月28日配信)

9月22日の東証株価は前夜の米国株式下落を受けて、朝方から売り先行で始まった。GENIX-CN70構成銘柄も商社、海運株など総じて下落した。半面、INPEX、石油資源開発、ENEOSなど石油株の一角は底固い動き。GENIX-CN70は前週末比2.08ポイント下落して164.04ポイントと5週ぶりに下落した。

21日の米原油先物市場は、米金融政策の引き締め長期化懸念が台頭し、利益確定売りに押された。期近終値は前日比0.65㌦安い89.63㌦と、3日続落し、6営業日ぶりに1バレル90㌦台を割り込んだ。

9月25日付紙面の関連記事「原油100ドルが視界に サウジ減産の影響を注視」

(2023年9月22日配信)

9月14日の米商品先物市場では、原油先物(WTI)価格が2日ぶりに反発し、終値は前日比1.64㌦値上がりして1バレル90.16㌦と、当面の節目と見られていた90㌦大台を突破した。90㌦に乗せるのは2022年11月7日の91.79㌦以来、10カ月ぶり。市場関係者の間では、原油需給の引き締まり感から先高を予想する声が強まっている。

原油市況の上昇を受けて、15日の東証ではGENIX-CN70構成銘柄のINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事といった、石油やエンジニアリング、商社など資源関連株が一斉に買い進まれた。INPEXは2008年以来、この週急伸した日揮は2018年以来の高値水準。

(2023年9月15日配信)

9月13日の東京証券取引所では、朝方からINPEX、石油資源開発、ENEOSなどGENIX-CN70構成銘柄の石油株が買い先行でスタートし、本年高値を更新した。前夜12日の米原油先物価格(期近終値)が前日比1.55㌦高の1バレル88.84㌦と反発し、約1週間ぶりに本年高値を更新したことが買いの手掛かりになっていると見られる。

原油市場では需給に引き締まり感が指摘されるなど、市況は当面強含むとの見方に傾斜しているようだ。ENEOSのこの日の株価は4年8か月ぶりとなる600円台を目前に捉えている。INPEXは2008年10月以来、石油資源開発は2009年6月以来の高値水準に来ている。

米原油先物は2008年に145㌦の最高値を付け、2011年から2014年にかけて100㌦前後で推移していた。最近の石油株は原油100㌦時代の再来をあたかも織り込むかのような値動きを見せている。

(2023年9月13日配信)

9月8日の東京株式市場は、前夜の米国株式市場の下落を受けて、朝方から利益確定売りが先行する展開となったが、この週のGENIX-CN70は前週末比1.67ポイント上昇して161.86と3週連続値上がりし、前週に続いて指数算出以来の高値を更新した。この週は三菱重工、川重重工、三井物産、石油資源開発などが指数をけん引した。

原油先物価格(米WTI)は9月7日、前日比0.67㌦安い1バレル86.87㌦と、10日ぶりに値下がりし、前日まで値上がりが目に付いたINPEX、石油資源開発、日揮、ENEOS、三井物産、三菱商事などの資源関連株には利食い売りが広がった。

また、個別では、このところ物色人気を集めていた三菱重工も6日ぶりに反落した。半面、三菱重工の急上昇に対して出遅れ感が台頭していた川崎重工はこの日も買いが途切れず逆行高、10連騰となった。

三菱重工の本紙最新ニュース:長崎で脱炭素基盤技術 既存拠点連携し開発推進/三菱重工

川崎重工の本紙最新ユース:世界初ドライ式水素タービン、NOx抑制と高効率を両立/川崎重工
(2023年9月8日配信)

市況情報

「暮らし未来シンポジウム2023」~ガスで叶えるサステナブル×ウェルネスな暮らし

「暮らし未来シンポジウム2023」~ガスで叶えるサステナブル×ウェルネスな暮らし

ウィズガスCLUB(構成団体は住宅生産団体連合会、キッチン・バス工業会、日本ガス石油機器工業会、日本ガス体エネルギー普及促進協議会)は10月25日、「暮らしの未来シンポジウム2023」をハイブリッド方式で開催し、約350人が参加した。「ガスで叶えるサステナブル×ウェルネスな暮らし」をテーマに子育て支援、健康、住宅、エネルギー分野における有識者4人が講演した。

<主催者あいさつ>

日本ガス体エネルギー普及促進協議会(コラボ)

小川慎介会長

(東京ガス副社長)

ウィズガスCLUBは人々の豊かで潤いのある暮らしの実現を目指して、住環境のさらなる充実・整備を進めることを目的とし、住宅関連事業者、キッチン・バスメーカー、機器メーカーおよびガス体エネルギー事業者の4団体により、2006年6月に設立した。この活動の一環として、毎年「暮らしの未来シンポジウム」を開催している。

今回は「ガスで叶えるサステナブル×ウェルネスな暮らし」と題して住環境や暮らし方、エネルギー分野から4人の有識者を招き、講演してもらう。

豊かな暮らしの実現に資する方策を提案してもらい、暮らしの未来を考える良い機会として参加者の事業や取り組み等の参考になれば幸いだ。

昨年に続き、会場とウェブ配信によるハイブリッド形式で開催する。会場では、休憩時にコーヒーブレークタイムを設けた。交流の場として活用してもらいたい。

<講演(1)・子育て家庭の住環境支援と豊かな暮らしの実現に向けて>

認定NPO法人びーのびーのは、地域社会の互助機能が失われ、密室育児になりがちな家庭を支援するため2000年に設立した。横浜市港北区で、親子の交流の場(地域子育て支援拠点)や認可保育所、多世代交流の場などを運営する。地域のシニアやボランティアの力を借りながら、地域で子育てする環境を作っている。子育てのスタートが豊かであることを応援したいという気持ちで日々活動している。

まずは子育て環境の現状をデータで紹介する。

少子化の原因の一つと言われているのが、性別役割分業観だ。内閣府の「令和2年度少子化社会に関する国際意識調査」によると、小学校入学前の子供の育児における夫婦の役割について、日本は「主に妻が行うが、夫も手伝う」が約5割に上る。一方海外では、例えばスウェーデンは「妻も夫も同じように行う」が9割を超え、これが常識になっている。

また新型コロナウイルスの影響等もあると思うが、子育てに対して否定的な感情をもつ親が増えている。首都圏の乳幼児がいる家庭約4千人を対象にした2022年のベネッセ教育総合研究所「第6回幼児の生活アンケート調査」によると、「子どもを育てるために我慢ばかりしていると思う」に対して「よくある」「ときどきある」と回答した人はこれまで4割程度だったのが6割に増加した。

ただ、プラスの面もある。総務省の「令和3年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子供をもつ家庭における夫の1日当たりの家事時間は16年と比較して21年は増加しており、家事の分担が進んでいる。

こうした状況を踏まえ、国は子供や子育て中の方々の視点に立った政策を行うために23年4月に「こども家庭庁」を発足した。役割としては、「こどもまんなか社会」の実現に向けた司令塔、つまり総合調整役を担う。各省庁の縦割り構造を打破し、地方自治体や民間団体とのネットワークを強化することで、新しい政策課題や隙間事業に対応するという。

6月には「こども未来戦略方針」を閣議決定した。経済成長実現と少子化対策を両輪で促進するもので、今後3年かけて年間3兆円半ばの規模で取り組むとしている。

この方針には「子育て世帯への住宅支援の強化」が明記されている。若い世代は所得が少なく、子供がいる家庭でも狭い家に住まざるを得ないという課題がある。支援策として公的賃貸住宅を優先的に入居できる仕組みや、戸建てを含めた空き家の活用促進、子供の声や音などを気にすることなく住める環境づくりなどが盛り込まれ、実現が期待される。

●子育て支援はふるさとづくり

住宅の住み替えは、長子が5歳以下の子供がいる世帯の割合が大きいことが国土交通省の調査で分かっており、小学校に上がる前に住むエリアが固定される傾向にある。子供にとって、乳幼児期や小学生のころに住んでいたエリアには強い思い入れがある。私自身、地域で子育て支援に携わる中で、子供にとってのふるさとづくりだと感じる。

●親子の居場所拡充へ

今後期待したいのは、子供の声や行動が制限されないような住宅の供給、子育てや新婚世帯への優先入居制度の拡充、防音などの改修工事に対する補助金給付などだ。ひとり親家庭や経済的に困窮する家庭が増えていることもあり、居住支援の拡充、家賃の減免、公的住宅のさらなる優先入居なども必要だ。

豊かな暮らしの実現に向けたまちづくりのために、妊娠期から子育て家庭を支える地域づくりとコミュニティー施設を増やすことが重要になる。安心して出産ができ仕事と生活のどちらも満足できること、就学前の教育・保育や子育て家庭の支援策が充実している環境を構築しなければならない。加えて、生活支援も求められている。

われわれの運営する地域子育て支援拠点では、子供の発達に関する不安やパートナーとの関係などといった相談が寄せられる。こうした悩みや困りごとに対応でき、そして親子ともども居場所となる場を拡大させることが必要である。

今後はNPOと住宅業界が連携して支援できる取り組みを行っていきたい。

・奥山千鶴子氏NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長認定NPO法人びーのびーの理事長

1985年筑波大学人間学類卒業、大手旅行代理店系の展示会等をマネージメントする会社に入社。2000年に地域の親たちと横浜市港北区にてNPO法人を設立し、主に乳幼児を育てる家庭への支援として区内3カ所の地域子育て支援拠点等を運営、07年には全国組織として子育てひろば全国連絡協議会を設立。国の少子化社会対策大綱や地方創生に関する検討会等の委員を歴任。現在、こども家庭庁こども家庭審議会臨時委員、内閣官房こども未来戦略会議等の委員を務める。

<講演2・子供から高齢者までの健康と活躍を支える住まいの条件>

WHO(世界保健機関)は2018年11月に、SDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールのうち、3番(健康)と11番(まちづくり)の達成に寄与するとして、住宅における冬季の室温を最低18度以上に設定し、新築・改修時は断熱をすること、夏季は室内熱中症対策を実施すべきと勧告している。

私は14年度から国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」に携わっている。この調査では、断熱改修の前後を比較して居住者の健康への影響を検証した。

改修前の調査によると、日本の住宅はシングルガラスの窓で隙間風だらけ、床暖房はないといった低断熱住宅が多数を占め、WHOが勧告する18度を満たさない住宅は9割に上った。これは先進国とは言えない遅れた状況だ。調査を進めると断熱改修と居住者の健康に因果関係があることが分かってきた。

一つは血圧への影響だ。起床時の血圧を測定すると、断熱改修前は30歳男性の場合、室温が10度低下すると血圧が3・8ミリ、女性では5・3ミリ上昇することが分かった。80歳男性だと10・2ミリ、女性では11・6ミリ上昇することから、血圧抑制のためには特に高齢者や女性は室内を暖かくする必要がある。

一方で断熱改修後は、試算上、平均で3・1ミリ低下する。これは厚生労働省が掲げる、国民の最高血圧を4ミリ低下させるという目標数値に近い。厚労省は4ミリ下がると脳卒中での死亡者数が年間1万人、心筋梗塞等の死亡者数が年間5千人、合計1万5千人が減少すると推計する。住環境が変われば血圧の低下が見込めるため、多くの人命を救うことができる。

Non―HDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールにも影響する。18度を下回る住宅では、18度以上の住宅(基準)に住む人に比べて1・7倍程度高くなる。心電図の異常所見も12~18度の住宅だと基準の1・79倍、12度未満の住宅だと2・18倍にもなるということが分かった。

さらに、高温入浴や長時間入浴などの危険入浴者数は、居間と脱衣所が18度未満の住宅では18度以上の住宅と比べて1・6倍になることが分かった。入浴中の溺死事故は交通事故死者数の2倍の年間5千人超であり、不慮の事故を防ぐためにも住宅の断熱改修が必要だ。

●疾病予防に床暖房を活用

子供や女性への健康リスクについても調査した。

子供に関しては小学生を対象に、住宅の室温と疾病との関係性について調べた。室温が17・8度と19・7度の住宅を比較すると、2度高いだけで風邪を引く子供は6割、病欠する子供は8割となった。感染症である中耳炎に関しては、冬季の居間の湿度によって変化する。予防に理想的な湿度は40%以上60%未満だ。これを基準とすると40%未満の乾燥した住宅では発症が3・1倍になり、60%以上の湿気の多い住宅では4・0倍となることが分かった。

冬季は灯油ストーブ等の暖房器具を使用する際、燃焼ガスとともに水蒸気も発生するため、結露して室内にカビが発生し、子供の疾病を招く原因となる。適度な湿度を保つためには断熱性能を高める必要があり、二重以上のサッシ窓や複層ガラス窓を導入することで結露とカビの発生を防止できる。さらに床暖房を導入すれば床の表面温度が高くなり、室温を必要以上に高くしなくても快適な湿度が保てる。断熱とともに床暖房を活用することが大切だ。

また女性の月経前症候群(PMS)の症状は住宅の暖かさと関連する。居間の床上1㍍の室温が約20度、床近傍室温が約18度であれば、床上1㍍の室温が約20度、床近傍室温が16度の住宅と比べ症状が7割となることが分かった。また月経痛も6割程度に抑制でき、足元を暖めることが効果的だとわかった。

●断熱改修5年後の効果

次に断熱改修を終えて5年経過した居住者の追跡調査の結果を紹介する。

血圧に関しては、断熱改修した住宅に住み続けることによる5年後の上昇抑制効果を検証した。その結果、断熱改修した住宅の居住者は未改修の住宅の居住者と比べ、最高血圧は平均で2・5ミリ下がった。

寝室の室温が断熱改修後18度以上に改善されると5年後の脂質異常症の発症は0・3倍という結果になった。脂質異常症はコレステロールなどの異常によって脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気を引き起こすため、断熱改修で発症を未然に防ぐことが重要だ。

日本で800万人いると言われている夜間頻尿についても、就寝前に過ごしている居間の室温が18度以上に改善されると5年後の発症が4割に抑えられるという結果が得られた。

また、つまずき・転倒に関しては特に足元の室温の改善がポイントになる。午後6時から11時の夜間に床上1㍍の室温が19度以上、床近傍の室温が16度で過ごした人は、室温が19度未満、床近傍の室温が16度未満で過ごした人と比較し、5年後につまずき・転倒が発生する確率は約半分になった。今回の調査では床暖房を採用する住宅はほとんどなく、床暖房を導入していればリスクはさらに低減すると推測する。日本では、家の中でつまずいて転倒したことが原因で死亡する人は交通事故死者数に匹敵する年間約2500人に上り、住環境の改善が求められている。

●仕事の能率が向上

これまでは暖かい家が健康リスクを低減するという報告だったが、温熱環境によって仕事の成果も変わるという実験についても紹介したい。

コロナを契機に在宅ワークが増加したことを受け、断熱性が高い住宅と低い住宅では仕事の能率にどのような影響があるか検証した。

実験は断熱等級の異なる三つの住宅で行った。断熱等級とは、国交省が定める省エネ基準の一つ。住宅の断熱性能を1~7の段階で分け、数字が大きいほど断熱性が高いことを示す。等級2、等級4、等級6の住宅別に40~60歳代の男女計12人の被験者で実験した。

結果、断熱等級が4、6では、足元が暖かいため血流低下量が小さく皮膚の温度低下が抑制されること、心電図や脳波を測定し、自律神経や集中力の乱れが少ないことが分かった。また、被験者にマインドマップという連想ゲームを実践してもらったところ、等級2と比較して等級6の方が成績が良好だった。子供であれば家での勉強がはかどることで学校や就職先の幅が広がり、生涯年収に影響を及ぼす可能性がある。

このように子供から高齢者までの健康と活躍を支えることができる断熱性の高い住まいのニーズが高まっている。25年以降の新築住宅は断熱等級4以上が義務化されるが、健康リスク低減や仕事や勉強の能率向上のためにも、等級4にとどまらず等級6の住宅を目指してほしい。

・伊香賀俊治氏慶應義塾大学理工学部教授

1959年東京生まれ。81年早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。2006年慶應義塾大学理工学部教授に就任。専門分野は建築・都市環境工学、博士(工学)。日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長等を歴任。主な研究課題は、「住環境が脳・循環器・呼吸器・運動器に及ぼす影響実測と疾病・介護予防便益評価」。著書に「“生活環境病”による不本意な老後を回避する―幸齢住宅読本―」等

<講演(3)・これからの住宅に求められる間取り・動線・設備とは>

2005年に神戸で開設した当設計室は個人経営でお客さまのペースに合わせ、主婦・母目線で住宅設計を行うため、特に共働きで子育て中の方に好評だ。インスタグラムに開設する「みゆう間取り相談室」では、これまで全国から約150件の相談を受けた。オンラインで話を聞いて2~3日のうちに提案するようにしている。情報があふれる今だからこそ対話を大事に、その家族に合った間取りを考案している。

家の要望で増えてきたのは(1)家事動線の良い間取り(2)洗濯は室内干しか機械乾燥(3)コロナ禍以降の習慣への対応(4)収納空間の充実(5)1階だけで暮らせる間取り―の5点が挙げられる。

家事動線については歩数を減らす、使う場所の近くに収納する、高さ方向の移動距離を短くする―といった点を意識すると良い。動線と動作を減らすと家事はラクになる。「洗濯物の一連の作業が1カ所でできる」「キッチンと水回りが近い」「帰宅してすぐに買い物やコート、かばんなどが片付けられる」「家事分担した時に作業しやすく片付けやすい」等の間取りをよくリクエストされる。ポイントは人それぞれ異なる家事の仕方や時間帯を把握すること。その家族にとって無駄な動きを作らないことが大切だ。

●乾太くんが人気

洗濯を干したい場所についてインスタで調査をしたところ、室内干しが52%、機械乾燥も15%おり、外干しは約3割にとどまった。ランドリールームについては設置したいとの声が8割超。洗濯時間は朝42%、夜45%と従来の概念が通じなくなっている。

ここで洗濯動線の良い2・5畳ほどの洗面所の例を紹介しよう。洗濯機の上に衣類ハンガー等の収納棚、天井には電動物干しユニット「ホシ姫サマ」(パナソニック)を組み込む。洗濯が終わったら竿を下げて干し、乾燥中は邪魔にならないよう上げておく。補助的に浴室乾燥も使える。乾いた衣類は洗面台の作業スペースで畳み、タオルや下着類は背面に設けた収納にしまい、その他の衣類は隣接するウォークインクローゼットに収める。洗面所内に掃除機も収納しておけば洗濯で落ちたほこりもすぐ掃除できる。

また、共働き世帯の拡大に伴い、ガス衣類乾燥機「乾太くん」(リンナイ)を望む声も多い。速乾性があり家事の予定を立てやすいと好評だ。アンケートでは将来的に衣類乾燥機を使いたいとの回答が使用中を含め7割を超えた。

コロナを経て、玄関の近くに洗面所やコート掛けを設置したいというニーズが高まった。洗面所は来客も入りやすい間取りにすることがポイント。当設計室では以前から花粉症に配慮し同様の提案をしており、これからも求められる間取りではないかと思う。

●3大収納空間

要望の多い3大「収納空間」は、(1)玄関土間収納のシューズクローク(2)ファミリークローゼット(3)台所のパントリー。(1)は土間収納にベビーカーやアウトドア用品、靴を収め、家族はそこを通って靴を脱ぎコートを掛け、かばん等を置いて玄関に出る「ただいま収納」が好まれている。(2)はアンケートで8割超が求める。

1階に主寝室のある間取りは意外にも若い建築主に好まれる。乳幼児がいると2階に上がって寝るのが大変だからだ。1階にリビングと一体に使える洋室を作っておいて、将来寝室にしたいという要望もあった。

●今後の間取り

今後一般的になると思われる間取りを三つ、紹介する。まず、洗面所は広めで収納付きか、洗面・脱衣所を分ける。洗面所と脱衣所を分けるのは家族に気を遣わせたくない、または洗面所を使う来客に脱衣所を見せたくないという理由だ。また、多様な洗濯の仕方に適用した間取りや、LDKの広さを確保しつつ収納空間を作ることも求められるだろう。

家事スタイルや設備は変化し続ける。ただ、最新のものが建築主に最適とは限らない。動線にこだわり過ぎて収納が減り、家族がくつろぐリビングやダイニングの居心地が悪くなるのも本末転倒だ。今後も建築主との対話を大切に、その家族に最適な間取りを一緒に考えていきたい。

・中川由紀子氏一級建築士事務所みゆう設計室代表

神戸でみゆう設計室を2005年に開設。育児・家事と仕事を両立してきた経験を生かし、丁寧なヒアリングで個々の暮らしに合わせた家事ラクで子育てしやすい間取りを実現。新築・リフォーム等の設計だけでなく、住まいの悩みや間取り相談も受け付けており、「みゆう間取り相談室」のインスタグラムのフォロワー数は1万3千人を超える。ホームページでは家事ラク間取りを公開。家事ラクな住まいやインテリアのコラム執筆・監修も行う。

<講演(4)・カーボンニュートラルwithガス>

今年はエネルギーに関して二つ、大きな動きがあった。一つは2月に基本方針が閣議決定され、5月に推進法と脱炭素電源法が成立したグリーントランスフォーメーション(GX)。もう一つは、G7の本会議を前に4月に札幌であった気候エネルギー環境大臣会合で共同声明に書き込んだ「2035年に温室効果ガス(GHG)を19年比60%削減する」という新目標だ。

GXとは、化石燃料をできるだけ使わずクリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動を指す。脱炭素でなくても低炭素でもいいというのがポイントだ。GXの実現へ、20兆円を国債で集め、先進的な企業や自治体に重点的に補助金として渡し、それを引き金に130兆円の民間投資を向こう10年間で呼び込み、合計150兆円の官民投資を進めるという筋書きを描く。

GHG目標については政府が掲げる「30年に13年比46%削減」をベースに多くの企業や自治体が削減目標を立てている。GHGは13年から19年までに14%削減されたため新目標は13年を基準年とすると66%削減となる。目標年次を5年延ばしたとはいえ、これは相当異次元な対策が必要で、例えば重油やコークスを使う工場は全部ガス転換するくらいのことが求められる。2年後ブラジルで開催予定の「COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)30」に向け、来春策定の第7次エネルギー基本計画はこの目標を織り込むことになろう。

●主戦場は非電力

カーボンニュートラル(CN)への道は電力、非電力、炭素除去の3分野ある。電力は50年に全てゼロエミッション電源になる。既存の原子力に加え、火力では燃料が石炭からアンモニアに、ガスから水素に変わり、どうしても出てくる二酸化炭素(CO2)は回収して化学原料に使うか埋めることになるだろう。

ここで注意したいのは日本では全エネルギーのうち電気として40%、送配電ロスを引けば25%しか使っておらず、CNの主戦場は非電力であるということだ。第6次エネルギー基本計画では人口減の中、現状1兆キロワット時の電力使用量が50年に1・3~1・5兆キロワット時になるとの前提で電化率を38%と試算しており、小型乗用車の電気自動車化をはじめ非電力の電化をやりきったとしても、電力以外の熱等の利用がエネルギーの主流であることは変わらない。

非電力分野の基本的な技術は水素になり、大型商用車や船、飛行機等は水素や合成気体燃料を使うことになる。石油業界はCO2と水素から「e―fuel」を作り、都市ガス業界は合成メタン「e―メタン」を目指す。これらの合成燃料は使うとCO2が出る一方で既存のインフラがそのまま使えるという大きなメリットを持つ。排出されるCO2は直接炭素除去、植物の炭酸同化作用に頼ることになるためクレジット化の動きが重要だ。空中のCO2を直接回収し埋める「DACCS」という技術も期待される。

CN実現の最大の課題はコストだ。RITE(地球環境産業技術研究機構)が22年に発表した50年における電源別発電コストでは、現状1キロワット辺り13円に対し、再エネ100%では53・4円、その他の場合も現状の2倍近くかかると試算している。コスト削減にイノベーションは重要だが不確実性が高い。成果を期待できる既存インフラの徹底的活用を進めるべきだ。

●日本の取り組みが地球を救う

CNへ向け、日本固有の取り組みとして注目されるのがメタネーションと燃料アンモニアだ。メタネーションはCO2と水素から都市ガスの原料となるe―メタンをつくる技術。アンモニアについてはJERAが35年に石炭火力のアンモニア混焼率50%を目指しており、私も石炭火力は40年くらいで卒業できると思っているが、それまで石炭火力を使い倒す。両者に共通する既存インフラの活用という考え方こそが、地球を救うと思っている。CO2を多く排出している新興国は石炭火力比率が天然ガス火力の1・5倍超あり、急速にガス化を進めている。そのような国に対し、欧州のように化石燃料の廃止を迫るのではなく、石炭もガスも使えるように燃料転換を日本が支援するという考え方こそ有効だ。

ただし、水素もメタネーションも簡単ではない。水素は水素発電が具体化していないため肥料として既にサプライチェーンがあるアンモニアのような需要がない。一方のメタネーションは急がなくてはいけない。技術的ハードルが高いからとゆっくりしていると人口減に加え、電化が進行し、ガス需要自体が減るリスクがあるためだ。

水素社会へ明るい兆しはある。今年9月、JFEの溶鉱炉が1基停止し、水深20㍍超の埠頭と222㌶の土地が空いた。川崎から横浜には大規模ガス火力が7基ある。水素はガス火力への混焼から始まるため、大型船が入る港、タンクが置ける土地、需要先の3点セットがそろう川崎から水素化が期待できる。

需要サイドからのアプローチでは中京地区が先行する。製造業はサプライチェーンのカーボンフリー化が求められるが、中小事業者はどのように対応したら良いのだろうか。CO2を工場で回収し、オンサイトまたは水素とマッチングさせて地域でオンサイトメタネーションを形成し、水素とCO2を地域内で循環させるカーボンリサイクルをやるしかない。こちらの方が早く動き出すかもしれない。

●ガス産業の未来は

ガス産業の未来は複雑だ。30年までは低炭素化へ燃転が進み、確実に順風が吹く。しかし、35年ごろを過ぎると逆風が吹き始め、ガスのグリーン化が最終的に重要になる。

日本ガス協会はe―メタンを30年に1%、50年には90%導管へ注入するという高い目標を掲げる。ただ、一国民として本当にできるのか疑問に思うため、35年、40年の中間点の姿を明示してほしい。

メタネーションに関してはCO2の削減効果を事業者、利用者いずれに付けるのかの調整や国際認証の課題もある。一方でコスト高の主要因のグリーン水素を使わず、水とCO2からe―メタンを作り出す東京ガスと大阪ガスの革新的メタネーションの研究は要注目だ。実現すればノーベル賞もので50年にe―メタン90%も十分可能になる上、LPガスのグリーン化や合成液体燃料の開発も前進する。

●地域からのCN

グリーンLPガスには、開発のアプローチとして「C」(炭素)を合成する王道の方法の他に、「C」を多く持つバイオ燃料から触媒を使ってプロパン、ブタンで止めるという方法があるという。触媒の開発は必要だが、小規模という点でコミュニティーベースのLPガスの特性に合う。地域からのCNという発想は都市ガスにも石油にもSAF(次世代航空燃料)にもないLPガス固有のアプローチで、これもまたGXだ。

CNのためにはともかく熱に対してどう立ち向かうかが重要であり、ガス事業者の果たす役割が決定的に大きい。ただ、そこに至る道は都市ガスもLPガスも平たんではない。しかし、日本独自の取り組みでやりがいはある。日本で開発し、世界に広げていく。われわれが今やろうとしているのは人類を救おうとしていることだと強調したい。

・橘川武郎氏国際大学学長

1951年、和歌山県生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、経済学博士。青山学院大学経営学部助教授、東京大学社会科学研究所教授、一橋大学大学院商学研究科教授、東京理科大学イノベーション研究科教授を経て、2020年より国際大学国際経営学研究科教授、21年同大学副学長、23年同大学学長。東京大学・一橋大学名誉教授。

<ウィズガスCLUBの主な活動>

(1)政策提言

ウィズガス住宅の提唱

(2)情報発信

シンポジウムやメディア、イベント等を通じた情報発信

(3)環境貢献

高効率機器普及によるCO2削減と植樹活動への協力

ウィズガスCLUBは住宅、キッチン・バス、ガス石油機器、ガスの4業界が参加するコンソーシアムだ。都市ガス、LPガス、旧簡易ガスのガス3団体が2005年10月に立ち上げた日本ガス体エネルギー普及促進協議会(コラボ)が中心となって、2006年6月に設立した。「人々の豊かで潤いのある暮らし」の実現を基本方針に掲げ、(1)政策提言(2)情報発信(3)環境貢献―活動に取り組んでいる。

(1)の政策提言では、最新のガス機器により快適で安全・安心、環境性にも優れた「ウィズガス住宅」を提唱する。

(2)の情報発信では、「人々の豊かで潤いのある暮らし」に関連する時流に沿ったテーマ・取り組みをイベントを通じて発信。今年度は「暮らしの未来シンポジウム2023」を開いた。また、国土交通省が推進し、住宅生産団体連合会が取り組む住生活月間中央イベントにも出展した。

(3)の環境貢献では、ベターリビングが主催する「ブルー&グリーンプロジェクト」に協賛する。この取り組みは「BL―bsガス給湯・暖房機」に認定されたエコジョーズ、エネファーム、エコウィルの出荷1台につき1本をベトナムに植樹し、高効率機器の普及と植樹によるダブルの温室効果ガス削減を図る活動として2006年6月にスタート。2014年からは東日本大震災で津波被害のあった岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の再生支援事業に着手。約1万本の植樹を2021年5月に完了、2022年4月にはプロジェクト参加企業などから約60人が参加し、植樹後初となる枝打ち作業を行った。引き続き植樹活動等を継続するとともに高効率機器の普及拡大に努める。

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